ソトブログ

文化系バーダー・ブログ。映画と本、野鳥/自然観察。時々ガジェット。

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読書

【連載小説】「踊る回る鳥みたいに」――第1回

今回、2021年12月10日より、小説「踊る回る鳥みたいに」を連載します。毎週金曜掲載予定。連載終了後はKDPにて電子書籍出版を予定していますが、その過程で気づいたことなど、別途記事として更新できたらと考えています。

知識ゼロから作る電子書籍の軌跡――My Own Way to KDP_001

電子書籍を作ってみたい、と思っています。コンテンツはこの「ソトブログ」をまとめたものと、自作の小説、という、ありきたりなものですが、その制作過程の公開なども通じて、わたし自身や読まれただれかによって、「手持ちにないカード」が手に入るような…

ブックレビュー“読む探鳥”: 山尾悠子『飛ぶ孔雀』――現実と空想世界を繋ぐPellets, Inc.

「不世出の幻想作家」、山尾悠子の傑作『飛ぶ孔雀』は、めくるめく空想世界が描かれながら、野鳥にまつわる実在のある「組織」が記述されています。その登場に驚きとともに、野鳥と読書を愛するものとして、歓びを感じています。

いま読んでいる紙のうえの鳥たちが、目の前の窓の外にもいる――トマス・ハーディ『呪われた腕 ハーディ傑作選』

トマス・ハーディ『呪われた腕 ハーディ傑作選』(河野一郎 訳、新潮文庫)は、19世紀末英国ヴィクトリア朝時代の作家、トマス・ハーディの短編集。ハーディを読みながら「小説のなかで描写されている鳥たちを数える。」という遊戯を通して、古典を読む愉し…

「他者」は、生きている人間だけとは限らない――2021年のNintendo DSi購入記と、現実世界と仮想空間の「オビョウク」。

20年ぶりにゲーム機を買いました。――といっても、最新のPlayStation 5なんてものではなく、Nintendo Switchでもなくて、「Nintendo DSi」。かつて一世を風靡したモバイル機種も、今やフリマアプリで1,000円程度で贖うことができます。

【レビュー】“朗読を聴く”という選択肢:Amazon Audibleと黒鳥社「音読ブラックスワン」。

現在プライム会員限定3ヶ月無料サーヴィスを実施中のAmazonのオーディオブック「Audible(オーディブル)」を使ってみました。また、わたしがAudibleを試してみるきっかけになった朗読コンテンツ「音読ブラックスワン」についても。

絵本『鳥たちは空を飛ぶ』――はじめて空を飛んだ鳥たちが世界を変える。

鳥たちは空を飛ぶ。/風に乗り、陽光を浴び、愉しげに、歌いながら自由に。――そんな書き出しで始まる本書は、わたしたちヒトからみれば羨ましいくらいに自由に空を翔ける鳥たちが、なぜ飛べるようになったのか、本書のことばを借りれば、「あなたたちを飛べ…

2020年の終わりと2021年の始まりに、佐久間裕美子『Weの市民革命』を読んだこと。

2021年を何から始めたらいいか、ひとたび考えだすと何も書けなくなっていたのですが、今書きたいことというと、2020年の年末に読んだ、NY在住の文筆家、佐久間裕美子さんによる『Weの市民革命』(朝日出版社)がよかった。タイトルは「ウィ」の市民革命、と…

鳥を鳥として描く、鳥の鳥による鳥のための物語――加藤幸子『心ヲナクセ体ヲ残セ』

今回紹介するのは「野鳥フィクション」のなかでも本命中の本命のハードコア、おそらく現代野鳥文芸、あるいは野生動物文芸のなかでも金字塔のひとつであると思われる作品。それが、ある鳥の誕生の瞬間から、渡りの足跡、繁殖、そして死までを「鳥自身」の視…

紙ソトブログ Vol.1「本のなかでするバードウォッチング」

この「ソトブログ」は、少し前からノートに手書き、それをPCで清書するという、おそらくこれを訊いた人のほとんどが、「そんな七面倒臭いことを。」と思われるであろうやり方で書かれているのですが、今回、それまでより丁寧に、できるだけ人に読めるように…

コロナ禍のさなか、小説の記述に鳥を探す、バードウォッチング。――カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』

カーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』(村上春樹訳、新潮文庫、2016年)は、これまで知らなかったことを悔やむくらいとても素晴らしい小説で、一読しての感想は、本書(原著“The Member of the Wedding”は1946年に刊行)と同時代のJ.D.サリンジャー『…

殆ど読み終わりかけていたのに読めないでいた「読みかけの本」と、悩まずに選んだAmazon Musicのプレイリスト。

この土日、何を読もうか――。緊急事態宣言下のこの週末、わたしは単身赴任中小さな部屋で過ごすことにして、今の気分で選んだ本はカーソン・マッカラーズ『結婚式のメンバー』。そしてその小説に触発されて、Amazon Musicでプレイリストを作成、久しぶりにシ…

ユニクロのワゴンの500円のスニーカー。あるいはリーバイ・ストラウスとレヴィ=ストロース。そして子どものためのAmazon Fire HD 8へ。

週末になるとわたしの足許はスニーカー(もしくは探鳥をするなら、モンベルのトレッキング・シューズ)ということになるのですが、といってもわたしの手許には、2足のスニーカーしかない。ついでにいうと仕事用の革靴も、2足しかない。理由は経済的事情によ…

面白い本について語るのはムズカシイ。あるいは、面白いということは読んでいるわたしを超えているということ。(続々・2020年4月の愉しい日々。with MONO マークシート用鉛筆)

面白い本について、わたしが読んで面白かった本について語るのは難しい。と、思いませんか? 何故ならとりもなおさず、その本が面白かったからで、面白いということは読んでいるわたしを超えているからです。わたしの知っていること、わたしがすでに愉しんで…

お気に入りのボールペン、積ん読の本。(続・2020年4月の愉しい日々。withエナージェルユーロ)

2020年4月。住んでいるこの単身赴任の小さな部屋(もちろんワンルーム)のなかを眺めていると、本棚であり衣装棚であり、ガジェット置き場であり常備薬や文房具まで置いてある、ベッドを除けばこの部屋ほとんど唯一の家具であり収納スペースであるスチールラ…

『Collins Bird Guide(コリンズ・バード・ガイド)』――Amazonほしい物リストから届いた、美しい贈り物に感謝(驚)。

それが届いたときの感激。すなわち、包みを開いてそれを手にして――、掌にその重みを感じ――、顔を近づけて洋書独特の紙の匂いを嗅いで――、そっとページを開いたときの感触と驚きと興奮を忘れないようにしながら、そのとき浮かんだ気持ちをなんとかうまく、言…

鳥たちのSong and Call――『歌う鳥のキモチ』を読んで。

バードウォッチングというと、つい「見る」ことに躍起になってしまうもの。でも街や自然のなかを歩いていて、鳥たちの姿を見かける以上に、その声が、歌が耳に入ってくる。その方が機会としては、ずっと多いはずです。「鳴く」ということを通して音で世界に…

カフカ『変身』の「新潮文庫の100冊」2018プレミアム・カバーに見惚れて――または言ってみりゃ僕らが紙の本を愛す理由。

いまや「紙の本を買わなくなった」という人も少なくないかも知れません。本が嫌いだから、というのではなくて、ひょっとしたらたくさん読む人ほど。 「だって嵩張るし、スマホやタブレット、Kindleに入れておけば、何時でも何処でも、何千冊だって持ち歩けま…

読んだあとも、手許に置いておきたくなる小冊子「mürren」と、遠くてもいつか行きたい、と思える書店「スロウな本屋」のこと。

フリーペーパーやミニコミ、小冊子のような雑誌というよりパンフレットに近いような少ページ、少コストの紙媒体であれば、たとえば市販の単行本のような、造本や印刷に凝ることは難しいでしょう。それなのに、ただの紙に文字や写真が印刷され、ホッチキスで…

リトルプレスとKDPを夢想する――Chromebookやポメラにおける「小さな物語」。

ブログ『おふぃすかぶ.jp』の鈴木章史さんによるKDP(Amazon Kindle Direct Publishing)電子書籍『アカウントを持って街へ出よう Chromebookとの365日』の表紙デザインをさせていただいたことをきっかけに、「KDPで電子書籍を作るのって面白そうだな」と思…

40がらみの男同士による音楽往復書簡。4月のプレイリストのテーマは「女たち」。

いつもポエティックで長ったらしい標題をつけるわりに中身がないと評判(かどうか知らない)の当ブログですが、今回はまあ、そのまんま。それで読みたくなるかどうかは話が別ですが。スギーリトルバード氏。彼は、九州出身のよそ者である私が色々な事情(ま…

春の七草採集イベントと、そのとき役立った、野外での野草観察に最適なフィールド図鑑2冊。

1月7日、毎回欠かさず参加している<ひき岩群ふるさと自然公園センター>による自然観察教室で、『七草粥を作ろう』というイベントがあり、今回も小学生の長男とともに行ってきました。

「あの人とあの人とあの人が出ているからあの雑誌を買う!」 ――<けもの>の青羊さんと、トオイダイスケさん、翻訳家の柴田元幸さんが「怒りの文学」を語る『ブルータス』#861号。

年の瀬も押し迫り、私的には2017年のベスト音楽アルバムは、何度もこのブログで紹介してきたシンガーソングライター、青羊(あめ)さんによるソロ・ユニット<けもの>の『めたもるシティ』を置いて他にないのですが、タイムラインを眺めていたら、青羊さん…

【書評】『ダンケルク』をきっかけに再読したい、物語を超越した「戦争小説」7選。

映画『ダンケルク』に物語がない、というのは実はウソというか、雑な言い方で、端的な語り口の問題だと思います。しかしながら、戦争を題材にしたフィクションには(少なくとも私の好きな作品には)、物語を逸脱していく傾向があって、戦争というテーマをフ…

映画レビュー『ダンケルク』――物語らない、あるいはノーランと田中小実昌。船底の穴と寝台の穴。

クリストファー・ノーラン監督の新作『ダンケルク』を観て、ダンケルク海岸で死んだ兵士も、生きて帰った者も、この映画によって、「今もあの時間のなかで生き続けている」ことになった、あるいは、「今もあの時間のなかで生き続けていることが証明された」…

祖母と“第三の新人”たち、祖父とビルマ戦線――小島信夫から『ダンケルク』まで。

先日私は自身で書いた祖母の告別式での挨拶を引用し、祖母の思い出について書きました。そこで私は、祖母と同世代の作家たちが晩年に書いた小説について触れています。(…)

映画レビュー『わたしは、ダニエル・ブレイク』――悪夢的不条理に立ち向かう、私たちの“スーパーヒーロー”。

「官僚機構の不条理」というと使い古された常套句ですが、ここまでひどいと笑うしかありません。 心臓発作のためにドクターストップがかかり休職中の大工、ダニエル・ブレイクは、国からの手当を受けようと役所に行きます。しかし、面談の結果、「就労が可能…

こんな文章が、書けたなら――。片岡義男『彼らと愉快に過ごす 僕の好きな道具について』

文章を書くうえで、おおきな影響を受けた作家が何人かいます。はじめに、高橋源一郎。小説や、文章で表現できること(してもいいんだ、ということ)の可能性の拡がりを教えてもらった。そして、リチャード・ブローティガン。「針の穴を通して世界を見る」よ…

くたびれて寝転んだ縁側で空を仰ぐと、遥か上空を猛禽類が飛んでいる(野鳥観察の愉しみ)。

炎天下の日曜日の夕方。 疲れ果てて帰ってきて、縁側に仰向けになって空を仰ぐと、澄み渡ったはるか上空を滑空する鳥が見えました。 それが見慣れたトビではなく、いつか先生に教えてもらったあの「オスプレイ」ではないかと思って、肩から斜めがけにしたま…

映画レビュー『恋するふたりの文学講座』――ロマンティックコメディの皮を被った「俺たち」ムービー。

邦題と、“35歳の独身男性と19歳の女子大学生の出会い”というプロットから、いかにもなロマンティックコメディを想像しますが、この手の、低予算のアメリカ製ドラマ映画は注意が必要です。タイトルからも日本版ソフトのパッケージヴィジュアルからも、映画の…