ソトブログ

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2020年の終わりと2021年の始まりに、佐久間裕美子『Weの市民革命』を読んだこと。

 

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2021年を何から始めたらいいか、こんな小さな個人ブログとはいえ、2021年という年の初めに、何を、どう書いたか、というのはあとで振り返ったときにけっこう、少なくともわたし自身の個人史にとっては大きな意味を持つんじゃないかな、と思うと何も書けなくなるのですが、ここではとにかく、気がついたことを付箋に書いて机やモニターの端にでも貼るみたいに、書きつけておこうと思います。

 

2020年の年末に読んだ、NY在住の文筆家、佐久間裕美子さんによる『Weの市民革命』(朝日出版社)がよかった。タイトルは「ウィ」の市民革命、と読む。無論、わたしたち、だ。

 

 

 革命が中継されている。

 

 ギル・スコット・ヘロンの名曲「革命はテレビ中継されない」にかけて、「どうやら革命は中継されるらしい」と書いたのは、ニューヨーク・タイムズ紙の黒人ジャーナリスト、チャールズ・ブロウだった。いまアメリカで起きているのは、おそらく後世、歴史の教科書に記載されるだろうレベルの革命だ。

 

佐久間裕美子『Weの市民革命』(朝日出版社)「はじめに」より

 

こんなキレキレの前書き(「はじめに」)で始まる本書を、どうしてわたしは手に取ることになったのか。そんなところから考えたくなる本でもある。2020年12月10日初版、すなわち出たばかりの本で、わたしは発売前に地元の書店で発売前に注文しました。ちなみにそこは、地方都市の小さな街の本屋さんだけれど、創業者はあの南方熊楠の呑み友達だったらしくて、けっこうな老舗ということになります。よくよく考えれば、わたしが住んでいるこの街には、新刊書店というとその店のほか、数店舗しかない――というようなことをわざわざ書いているのは、著者の佐久間さんも、本書をAmazonではなく、リアル書店(や版元)から購入して欲しい旨、発言されていたから。

 

わたしはAmazonプライム会員だし、そのサーヴィスを日常的に享受しているしこのブログだってAmazonアソシエイトというアフィリエイトを利用している。「自分はどんな消費者でありたいか」と自問し「自分ごとのサステイナビリティ」を呼びかける本書を読んで、共感を覚えつつ自分を顧みると、いきなりそういう矛盾に向き合うことになります。つまり、ひとまずは、来たるべき未来について希望を伝える佐久間さんのテキストは、読むとワクワクすると同時に、どこまでもわたしたち自身のリアル・ライフに視線があって、だからこそ、たんに気持ちいいだけのものではない。あるいは、読んで知識を得て、そのことをもって満足して気持ちよくなる、だけのものではない。

 

――というところから、まだ全然触れていない、本書の中身、どういうことが書かれているかに踏み込んでいってもいいのだけれど。「どうしてわたしは手に取ることになったのか」――どうして佐久間裕美子さんという書き手と、この本に興味を持って読みたくなったのか、わたし自身がもう思い出せなくなっている、そのことがわたしにとっては面白い。2020年の後半に、『こんにちは未来』という、佐久間さんと若林恵さん(雑誌『Wired日本版』の元編集長)によるポッドキャストを聴き始めたのが直接・間接のきっかけだけど、それを聴き始めたきっかけは憶えていないし、それ以前に佐久間さんや若林さんの著作に触れた経験もない(Amazonのウィッシュリストに入ってはいたけれど、購入して読むには至っていなかった)。

 

 

読んで数ページごとに、気になるところ、興味深いところ、引っ掛かるところがありまくって、付箋を貼りまくりながら読んで――その付箋が紙ではなくてフィルム製で、100均でも手に入る、細いフィルム付箋はここ数年のお気に入りで使い続けているのだけれど、小さく薄いプラスチック製のそれをこの本に、あるいはわたしが日々本を読みながら、使い続けているのはどうなんだ? とも思うことになる、その挟んだ付箋のうち、(偶々)本の天からいちばん高く飛び出している付箋の箇所を読み返してみると、こう書いてある――

 

 独立した個人として、自分のルールで生きているつもりでも、知らずにウイルスを渡してしまうリスクがある。そういう状況を体験したことで、自分はより大きな世界とつながっているのだ、という認識を新たにした。しかし、これは同時に、個々の小さなアクションであっても積もり積もれば大きな変革を引き起こすことが可能だ、ということでもあった。


佐久間裕美子『Weの市民革命』(朝日出版社)「コロナが前進させた社会のシフト」より

 

2020年の最後に本書を読んで、2021年の初めに何を始めたいか? まずは『Weの市民革命』をもう一度読み返して、自分がやりたいこと、自分でやりたいこと、を見つめ直してみたいと思います。

 

――先日著者の佐久間裕美子さんのインスタライブを視聴していたら、佐久間さんの山の家の前に、Cardinal(おそらく、MLBのセントルイス・カージナルスのチーム名にもなっている赤い鳥、Northern Cardinal=ショウジョウコウカンチョウのことだと思う)が現れたという。デヴィッド・フランケルの映画、The Big Year(邦題『ビッグ・ボーイズ/しあわせの鳥を探して』)のように、アメリカ中を彼の地のバーダーとともに縦断・横断することは今はできっこないけれど、いつの日か、そんなことをしてみたい――。そのときにたくさんの野鳥たちがまだ見られるような世界であるために、わたしは考えて、行動すべきだろう。そう考えた2021年の劈頭です。

 

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ノビタキ(2020年11月。地元の田圃で、長男が撮影したもの)。写真と本文は直截関係ありません。