ソトブログ

文化系バーダー・ブログ。映画と本、野鳥/自然観察。時々ガジェット。

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“スズメの羽根にくるまって”――Bird Songs in Apples #001(野鳥と音楽を愛する人のためのApple Musicプレイリスト)

 

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写真はオオタカ(2021.12、和歌山県下)

心が激しく動くと心はいつもより敏感なセンサーとなる。

 心が激しく動くと心はいつもよりもずっと敏感なセンサーとなり、ふだんは素通りしていることにも反応して、「これは今の自分と関係している」と感じる、別の言い方をすれば連想が過活動状態になる。
 いわゆる冷静で客観的な判断ではそれら事象の脈絡やつながりはわからないかもしれないが、そういう判断と芸術や表現は相性が良くない、絵でも音楽でもダンスでも表現というのはすべてそういうもので、感じる人は感じるが感じない人は説明的な言葉を補足しても感じない、
「おれにわかるように説明しろ」
 という態度では絵も音楽もダンスも小説も、それから料理も、人の気持ちもわからない。


保坂和志『ハレルヤ』(新潮社、2018年/新潮文庫、2022年)「あとがき」より

 

 ごくふつうの個人の雑記として2017年に始めたわたしのこの「ソトブログ」は現在では、わたしは「文化系バーダー・ブロガー。または野鳥文学愛好家」と名乗り、あらゆる書物や映画、音楽などに野鳥を探す、「インドア文化系ヴァーチャル探鳥」とでもいうべき仕事(お金を生む仕事、という意味ではありません)を続けています。

 

 それで音楽の方では、楽曲(音)や歌詞やアーティスト名やMVにと――鳥を探してはAmazon Music Primeでプレイリストを構成する、という試みを毎週月曜日、これまで29回に渡り続けて来ました。先週の休載を挟んで今回からは、もっと沢山の音楽ライブラリーのなかから、と思い立って、サブスクリプション・サーヴィスをApple Musicに乗り換えて、続けていきたいと思います。

 

 そのおかげで今回は、わたしが最も好きなバンドであって、昨年ドキュメンタリー・ムービー『映画:フィッシュマンズ』(手嶋悠貴監督、2021年)も公開されたフィッシュマンズの代表曲のひとつ「ナイトクルージング」の2018年のリミックス、「ナイトクルージング2018」をプレイリストに並べることができました。

 

『映画:フィッシュマンズ』にはわたしは、仲間たちと10年以上に渡って続けたDJイベント「フィッシュマンズナイト大阪」(@fishmansnight) | Twitter、現在は活動休止中)としてクラウドファンディングを通じて出資しています。実務的なことはイベントでもいつもタクトを揮ってわたしたちを導いてくれた盟友・Nくんがやってくれて、わたし自身は今後の活動のためにプールされていたイベントの売上金を使って映画へ出資することに同意しただけですが、完成した映画を観るだに、フィッシュマンズの音楽に対してはわたしは、この文章の冒頭に引用した保坂和志さんの小説『ハレルヤ』のあとがきの通りに、心が激しく動き全身が過活動になるのを実感します。

 

映画:フィッシュマンズ公式サイト

 

 京都大学白眉センター特定助教・鈴木俊貴先生がシジュウカラの言語研究で、シジュウカラが複雑な文法を用いて仲間たちや別種の鳥類たちともコミュニケーションをしていることを明らかにしているように、鳥たちは彼ら自身の生存戦略として、天敵から身を護るために常に五感をフルに働かせて生きています。しかし彼ら鳴禽の、なわばり維持や求愛のためのさえずり=Songにはやはり聴き手であるわたしたちにも、鳥たちの愉しみ悦び、ウキウキ――感情のエロティックな躍動を感じとることができます。

 

京都大学特定助教・鈴木俊貴先生のウェブサイト

 

 人間の音楽家、に限らず小説家も映画作家もダンサーも料理人も美術家も、ものづくり、プロダクション(子育てや教育も含めて何かを生み作り育てることすべて)に携わる人々はみな、――いや、何も生み出さずともただただいまここに生きている限りわたしたちはみな――鳥たちのようにさえずりたいのだ、とわたしは思います。保坂さんなら生きているとか死んでいるとか関係なく、生きていても死んでいても、人や猫や鳥たち(や色んな生きものたち)は踊り歌い、愉しんでいると言うでしょう。
 わたしが、どんな本を読んでも映画も見ても音楽を聴いても、そこに鳥たちの姿を見つけることができるのが、そのひとつの証明です(前回(昨日)の記事と同じ趣旨のことを書いてしまいました)。

 

プレイリスト「2022.06_Wrapped in wings of a sparrow」

※以下、選曲は全て、「演者/曲名」で表記しています。
※下記プレイリストのリンクより、Apple Musicで聴くことができます(Apple Musicのメンバーシップが必要です)。

2022.06_Wrapped in wings of a sparrow」(選曲:ソト

M01. Big Thief/Sparrow
M02. Adrianne Lenker/anything
M03. フィッシュマンズ/ナイトクルージング2018
M04. Leonard Cohen/Nevermind
M05. Kacey Musgraves/justified
M06. Bread Pilot/Skin Day
M07. スギーリトルバード&The LB's/赤い靴
M08. イ・ラン(이랑)/Imjingang(イムジン河:임진강)
M09. Vulfpeck/Birdwatcher
M10. The Bird & The Bee/Jump
M11. 小田朋美/春の扉(Marimba ver.)
M12. 菊地成孔&ペペ・トルメント・アスカラール/たゞひとゝき 
M13. 友部正人/言葉がぼくに運んでくるものは

Adrianne Lenker - "Anything" (Live for WFUV) - YouTube:本プレイリストM02、エイドリアン・レンカー「anything」、ラジオ局「WFUV」のためのライヴ・ヴァージョン。エイドリアン・レンカーはM01、ビッグ・シーフのリードボーカル/ギタリスト。

 

 本連載「Bird Songs in Apples(野鳥と音楽を愛する人のためのApple Musicプレイリスト)」は、今後も毎週月曜更新予定です。次回もお楽しみに!

 

Night Cruising 2018

Night Cruising 2018

Amazon

上記プレイリストのM03「ナイトクルージング2018」を含むフィジカル盤(CD/Vinyl)。

 

【Apple Music オフィシャルサイト】

 

【当ブログの「野鳥音楽プレイリスト」記事一覧はこちら。】