ソトブログ

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KDPでペーパーバック(紙の書籍)版を作ってみました。――知識ゼロから作る電子書籍/KDP(Kindle Direct Publishing)の軌跡 003

 

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<野鳥小説>集、『踊る回る月みたいに』をペーパーバック版としても、Amazonにて発売しました。

 

 先日、当ブログでの連載に加筆・修正したかたちで、電子書籍(Amazon Kindle版)として発売したばかりの<野鳥小説>集『踊る回る月みたいに』。徐々に読んでくださる方も増えてきて、作者として、バーダーとしてとても嬉しく思っています。
 そしてこのたび、この『踊る回る月みたいに』を、ペーパーバック版(紙の書籍)としてもAmazonにてリリースしました。価格は750円と、Kindle版の250円よりずいぶん高くなってしまいましたが(その理由は後述します)、電子書籍ではない、実物の手触りのある紙の書籍にはやはり、モノとしての質感――既に流行らないことばかもしれませんが本の「クオリア」が感じられ、より手に取って、読んでいただき易くなったのではないかと思っています。

 

上記商品ページにて、Kindle版とペーパーバック版を選ぶことが出来ます。

 

KDP(Kindle Direct Pubilishing)でペーパーバックの作成は、意外と簡単(ですが)。

Amazon、KDPの公式サイトより転載:セルフ出版 | Amazon Kindle ダイレクト・パブリッシング

 

 さて、製作中は気づかなかった、というか素通りしていたのですが、Amazonのセルフ出版、KDP(Kindle Direct Pubilishing)のポータルをよく見てみると、
Kindle ダイレクト・パブリッシングなら、電子書籍とペーパーバックを無料でセルフ出版し、Amazon のサイトで何百万人もの読者に販売できます。
 とあります。そう、ペーパーバック=紙の書籍を出せるということです。ご存じの方もたくさんいらっしゃるでしょうが、わたしは何故かスルーしていました。

 

 ――というのも、思い出話になってしまいますが:10年程前、友人たちのバンドともに、「わたしの小説とバンドのCDを2in1パッケージした作品集」というのを自主制作したことがあり、その頃はこんなサービスはなかったので、ネットで探した印刷業者でイニシャル200部で依頼して作ったのですが、200部、というのはわたしのような交友関係も狭い無名の小説書きにはハードルの高い数字。インディーズながら関西圏で広く活躍していたバンドのみんなが地道にライブなどで販売してくれたおかげで何とか売り切ることができたのですが(といっても数部、わたしの手許に残ってはいます)、その記憶から、

「どうせイニシャルコストか在庫を抱えることになるのでは?」

 という先入観があり、自分には関係のないことだと思って、目に入れないようにしていたのです。でも今はオンデマンドの時代。しかもマッシヴ・アマゾン・エンパイアのサーヴィスです。ちょっと調べてみると、一冊の価格に所定の印刷コスト分がかかるものの、イニシャルで著者の負担はゼロ。一冊売れるごとに定価-租税分-アマゾン帝国の取り分-印刷コスト分=著者のロイヤリティ。というセッティングになっているようです。

 

 そんなわけで今回、ペーパーバック版の製作に取り組んだのですが、その工程は、初めてでは少し戸惑いもありましたが、作業自体はそれほど難しいわけではありません。そうした作業・手続き・出版までの流れといったHow to、Tips的なものをまとめるのは、わたしは滅茶苦茶苦手なので、あえてここには書きません。「KDP ペーパーバック 出版」などと検索すると、Amazonのオフィシャルのマニュアルと、親切なアーリー・アダプターの皆さんの丁寧な解説サイトがいくつもありますので、興味のある方は参考にしていただければと思います。ちなみにわたしは本文:Microsoft Word(2019)、表紙:Photoshop(Ver7.0)という最先端には程遠い制作環境でしたが、全然これで、必要十分でした。

 


価格設定について

 今回のわたしのKDP本『踊る回る鳥みたいに』の価格設定ですが、結果として、

・Kindle(電子書籍)版:250円
 ※ただしKindle Unlimited加入の方は読み放題:追加料金無料に含まれる。
・ペーパーバック(紙の書籍)版:750円

 となっています。電子書籍版とペーパーバック版の価格差があり過ぎるのは心苦しくはあるのですが、以下に、この価格設定の根拠を明示しておきたいと思います。

 

【Kindle版について】

 最低99円から出せるKindle版を250円としたのは、原稿用紙100枚超の中編+掌編2作の小説集の価格として適正であろうと考えたことと(拙作の作品的価値はこの際、措いた上で)、250円以上の設定で「KDPセレクト」に登録でき、Kindle Unlimetedの読み放題対象となることから、より広く読んでいただける可能性があると判断したからです。但し、「KDPセレクト」に登録すると本書籍は、Kindle版での独占販売(他社電子書籍ストアで併売できない)となります。このこと自体はマッシヴ・アマゾン・エンパイアの軍門に下るようで、微妙な思いもあるのですが、今回は致し方なし、ということにしました。

 

【ペーパーバック版について】

 KDPのペーパーバック版における価格設定は、定価の下限は、印刷コスト÷ロイヤリティレート(ペーパーバック版は60%)。本文モノクロの印刷コストは108ページまで400円の定額となっていますので、合計104ページのわたしの『踊る回る月みたいに』の場合、400÷0.6=667円が最低価格となるのですが、売価は×消費税(10%)ですのでこの場合、734円と半端な数字となってしまいます。しかもロイヤリティ60%だけど、税や経費で差し引かれ、この設定では著者の取り分は0円。ということで、切りのいい数字で売価750円とさせていただきました。これで一冊当たりの著者分9円です(ちなみにKindle版、KDPセレクトでのロイヤリティは70%、今回の場合158円)

 

 ――と、電子書籍版との価格差500円の理由は上記の経緯に拠ります。著者ロイヤリティはずいぶん異なるのですが、わたし自身、紙の書籍に愛着があるので自分でも電子書籍版/ペーパーバック版の両方を購入しました。「読んでみようかな」と思って下さった方は、ロイヤリティ云々の話はまったくお気になさらず、ご自身の手に取り易い、利便性の高い方を選んでくださると幸いです。

 

今回の本のサイズ(判型)は102.8×108.2mmで一般の新書に似たサイズ(若干縦長)です。KDPでは他に様々な判型の他、任意の数値(サイズ)も設定できます。

『踊る回る鳥みたいに』本文。KDPペーパーバック、印刷や製本は非常にしっかりしていて、今どきのオンデマンド印刷のクオリティの高さに驚きました。本文用紙(今回はモノクロ印刷用のクリーム色)は市販の文庫や新書よりはやや厚め、単行本でよくある感じかな、と思います(紙については素人ですが)。

 

 ――というわけで、ただ作るのは、表紙も本文も最終的な入稿形態はPDFであって、Wordやグラフィックソフトがある程度触れば、(わたしにもできるのだから)誰でもできる、といって差し支えありません。ただ、実際実作業をひとりでやってみて実感したのは、プロの編集者/校閲者さんの仕事の確かさでした。素人のひとり作業、しかもわたしのような抜けの多い人間では、「完成した!」と思ってもいくつも誤記やレイアウト上のミスが見つかります。実はリリース後も、まだ見つかってしまう表記誤りを直したりしています。句読点や「てにをは」は、あえて一般とは違う使い方をしている部分もありますが、明らかな文字の誤りなどは適宜、正しています。読者の方で、クリティカルな表記誤り等を発見された方がいらっしゃいましたら、是非当方までご教示下さい(「問い合わせフォーム」まで)。ペーパーバック版は返品・交換というわけにはいきませんが、次版以降で直していきますし、電子書籍版は随時アップデートしたいと考えています。

 

 

【以前の記事から:KDPにおける、ブログの書籍化や他の著作物からの引用にかかる注意点についてまとめています。】

知識ゼロから作る電子書籍の軌跡 002「コンテンツ編」:ブログの書籍化/著作権(引用・歌詞)について - ソトブログ

 

【KDP=Kindle DIrect Publishingで出版した経緯、その際の気づきについてまとめています。】

 

【当ブログ連載時の「踊る回る鳥みたいに」全回リンクはこちら。※電子書籍化にあたりブログ掲載原稿から一部改稿、追加収録があります。】