知識ゼロから作る電子書籍の軌跡 002「コンテンツ編」:ブログの書籍化/著作権(引用・歌詞)について
【2022/5/13追記】
本書『踊る回る鳥みたいに』をペーパーバック(紙の書籍)としても発売を開始しました。下記リンクより、Kindle版/ペーパーバック版を選択できます。ペーパーバック版出版の経緯、価格設定や制作過程での気づきについては、こちらの記事をご参照下さい。:KDPでペーパーバック(紙の書籍)版を作ってみました。――知識ゼロから作る電子書籍/KDP(Kindle Direct Publishing)の軌跡 003
- 「KDP=Kindle Direct Publishing」を利用して電子書籍をリリースするにあたり、気がついたことを書いてみます。
- ブログを再構成したものであっても、KDPセレクトに登録できる。
- 著作権について(他書籍等からの引用、歌詞の引用)。
「KDP=Kindle Direct Publishing」を利用して電子書籍をリリースするにあたり、気がついたことを書いてみます。
先日お知らせしたとおり、当ブログでの連載をまとめた小説集、『踊る回る鳥みたいに』を出版しました。少しずつ購入していただく方も増えてきて、とてもありたがたく思っています。
Amazonの「KDP=Kindle Direct Publishing」というセルフ出版のサーヴィスに関しては、事前に想像していたほど難しい作業はなく、また様々な先達がいらっしゃいますので、
「Kindle 自己出版」「KDP 出版方法」
でも何でも、検索すれば数秒でそのハウツーをまとめて下さっているサイトに辿り着くことができますし、わたしも大変お世話になりました(元の原稿はあったとはいえ、実作業としておよそ4、5日にで完成させることができました)。
その上でそうしたハウツー記事をまとめるのが得意ではないわたしが付け加えることはないに等しいのですが、それでもそういったサイトやAmazonのオフィシャルヘルプでもわからなかった点についてなど、いくつかの観点から、わたしが今回KDPを利用して電子書籍をリリースするにあたり、気がついたことを書いてみたいと思います。
今回は、まずはコンテンツについて。
ブログを再構成したものであっても、KDPセレクトに登録できる。
そもそも「電子書籍を作ってみたい」という人には何を本にしたいか、というのはアタマのなかにあったり、すでに原稿があったりするはずで、それについてわたしが申し上げることは何もありません。わたしのようにブログから記事をまとめて本にしたい、という人も多いでしょう。KDPには、「KDPセレクト」という制度があり、当該電子書籍をKindleでの独占販売にするものです(90日ごとに更新)。それにより、
・KindleUnlimited対象に
・印税率が35%→70%に
なるなど、著者側としてはメリットが大きく(※詳細は上記リンク(Amazon公式)を参照下さい)、Amazon独占販売になることが想定する販売チャネルや、自身の政治的信条を棄損するほど問題でなければ、ぜひ登録しておきたいところだと思います(ここは冗談で書いているのではなくて、個人的には結構本気で考える必要があるところではあるとも思いますが)。
ただ、今回のわたしの小説集の場合もそうですが、書籍に収録するコンテンツのほとんどをブログ上で無料で公開している場合はどうなるのか? 審査に引っ掛かるのではないか? という危惧はあったのですが、これは<それが自己のサイトであり、ウェブ上で公開している理由を説明すれば問題ない>という趣旨の記事を書かれているものも読みましたが、わたしの場合、商品説明や前書き(「はじめに」)で、そのことを明記していたためか、Amazonから問い合わせが来ることはなく、そのまま審査通過し、KDPセレクトに登録されることとなりました。
著作権について(他書籍等からの引用、歌詞の引用)。
この章の最後に、小説を書くための「道具」について述べておきます。
私は手書きで小説を書いている。原稿用紙はB4サイズの四〇〇字詰めで、筆記用具はパイロットのスーパー・プチというサインペンの中字*1の黒。最近は、プロ、アマをを問わず、ワープロやパソコンで小説を書く人が圧倒的に多いけれど、私が手書きを続けているのは次のような理由がある。
小説は、つねに「今書いていることが面白いかどうか」「いま書いている部分と全体の関係はどうなのか」ということを考えながら書き進めるものだが、手書きのほうが、いま書きつつある小説が、〝一望〟しやすいのだ。ここでいう〝一望〟とは、ストーリーの流れが見えるということではなく、小説のそれぞれの部分と全体がどう関連していて、それが全体としてどういうイメージを作っているか把握することで、ワープロではせいぜい一〇〇枚ぐらいまでの小説しか〝一望〟することができない。
(中略)
それからもう一つ、手書きの場合、書いていて「これはつまらないな」ということに早く気がつく。手書きというのはやはり〝労働〟で、いまやっている仕事の実感が直接伝わる。〝労働〟という意味で手書きはたしかに大変なのだが、大変なだけに、書いていることが面白くないと続けられなくなるのだ。保坂和志『書きあぐねている人のための小説入門』(単行本:2003年 草思社、文庫:2008年 中公文庫)より
上記の文章は、わたしが20年来、勝手に「小説の先生」と仰ぎ見る作家、保坂和志さんの現在のところ唯一の小説の書き方指南書からの引用ですが、わたし自身、今回の『踊る回る鳥みたいに』の表題作は、第1稿はノートに手書きしたものです(わたしの場合はA5サイズの横罫のノートに横書き)。現在のWordを始めとしたワープロソフトには、様々な校閲機能が備わっておりその恩恵に預からない手はないですが、「小説とは何か」「小説とはどのように書かれるべきか」を考えていくと、非常に示唆的な文章ではあります。それでも手書きに対する抵抗感の大きい人もいるでしょうが。
――さて、この項の主眼はそこではなく、引用について。これから「本を出そう」という方なら、著作物には著作権があり、著作権法上に定められた正当な理由、範囲でなければ無断で引用することは法に抵触することはご存じかと思います。
わたし自身は、引用病か、というくらい、このブログを含めて文章を書くときに、わたし自身の手持ちの知識や考え方の外側にあるものに触れながら書きたい、ということを常に意識していて、他の書籍から文章を書き写し、引用することが大好きなため、今回の電子書籍(小説)でも4つの文献からテキストを引用しています。そしてそのことが、著作のオリジナリティを棄損するものだとは考えていません。著作権法上の例外、すなわち他者の著作物を許可なく利用することについては、著作権法32条1項に定められています。
第三十二条 公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。
「昭和四十五年法律第四十八号 著作権法」(e-Gov法令検索より)
「引用」の該当条件については、一定の解釈がありますので、法律関係のサイトなどをチェックされるなどして、各自判断すべきものと思います。わたし自身は引用符をつけて引用することで、引用部分とわたしの文章の区別を明瞭にした上で、本文だけでなく奥付の前の最終ページに「引用文献リスト」を掲載して、引用させていただくこととしました。
ただし、KDP=Kindle Direct Publishingにおいては、そのコンテンツ・ガイドランで、「JASRAC を含む、著作権等管理事業者の管理楽曲の楽譜・歌詞を含むコンテンツは、現在 Kindleストアで販売することはできません。」とはっきり謳われています。
それについて個人的に思うところがないわけではないですが、わたしの小説「踊る回る鳥みたいに」においては、電子書籍化を念頭に、手書きの第1稿にはあった歌詞の引用を回避する記述に改稿を行いました。
以上、今回はKDP=Kindle Direct Publishingで電子書籍を出版するにあたり、コンテンツの内容部分で疑義が生じる点について、いくつかまとめてみました。これから電子書籍を出版する皆様の参考になれば幸いです。
『踊る回る鳥みたいに』(野鳥文芸双書 #001)発売中です。価格250円。Kindle Unlimited対象です。(【2022/5/13追記】ペーパーバック(紙の書籍)版の価格は750円です。)
【以前の記事から:当ブログKDP第1弾『踊る回る鳥みたいに』発売にあたって。】
【電子書籍】『踊る回る鳥みたいに』(野鳥文芸双書 #001)を、当ブログのKDP(Kindle Direct Publishing)第一弾として発売しました。 - ソトブログ
【当ブログ連載時の「踊る回る鳥みたいに」全回リンクはこちら。※書籍化にあたりブログ掲載原稿から一部改稿、追加収録があります。】
*1:※引用者註:太字は原文は傍点