“Pop Life in Birdland”――Music for Slow Joggers #006／Birders' Songs #024（野鳥とランニング、ジョギングのための音楽プレイリスト）

「板一枚」がありさえすれば。
プレイリスト「2022.05_Pop Life in Birdland」

「板一枚」がありさえすれば。

別世界への穴、カフカの「書く手」が、瞬間にして、あるいは一息で届いた、この通路、穴、一枚の板こそが、あるいは、……思い切って書いてしまいますが、「詩というもの」への入口であり、またその出口でもあるのです。こんな教訓のようなことをいうのは決して好きではないのですが、いいですか、この「板一枚」がありさえすれば、これが命の板になって、……わたくしたちも、生きて行くことができるのです。

吉増剛造『詩とは何か』（講談社現代新書）より

　ジョギング／ランニングの際に聴くBGMとして、探鳥行の車中や、外に出られない日のヴァーチャル鳥見的音楽として、Amazon Music Primeでわたしが作成したプレイリストをシェアするのが、本企画「Music for Slow Joggers／Birders' Songs」です。

　冒頭でいきなり走ることとも野鳥とも、関係のない引用をしましたが、戦時下でも、インフレ下でも、筆舌に尽くしがたい事件／事故が起こっても、いまここにいるわたしたちは生きて、生活をしています。ならば、草木に水をやるように、わたしたちも日々、潤っていたいはずです。わたしの置かれている環境も、これを読んでくださっているどんな方とも、少しずつ異なるものでしょう。

　だとしても、わたしたちは同じ曲で踊ることができる（少なくとも、可能性として）。そんな思いで毎回選曲していますが、そのため、というわけではないのですが、今回はとりわけ、メジャーな有名曲、クラシックスを選びました。プリンスから、ジョージ・マイケル、マドンナ、ルー・リード、クラッシュ、ブルース・スプリングスティーン、ポール・マッカトニー、パティ・スミス、西岡恭蔵（ハンバートハンバートによるカヴァー）、ベック、ジャスティン・ティンバーレイクまで。

　実はちゃんと少しずつ、走ること、歩くこと、鳥たちのことが、あるいはそれらを通して、歌い手の真意を含意した歌を、織り交ぜています。そもそもランやジョグのための音楽と、室内バーディングの音楽を同列に扱って、プレイリストに仕立てるというのはふざけた企画だと思われる向きもあるでしょう。しかしわたしは、クラスタ化の果てに孤立化し、分断される世界を望みません。身体性を失い個人の輪郭の失われる、『2001年宇宙の旅』や『新世紀エヴァンゲリオン』の“人類補完計画”のような未来も望みません。

　ヘルシーで健全なエロティシズムに溢れた音楽は、わたしたちの走ること、鳥を想い、鳥を見ること、生活することを潤してくれると信じています。

プレイリスト「2022.05_Pop Life in Birdland」

※以下、選曲は全て、「演者／曲名」で表記しています。
※プレイリストのリンクをクリックすると、Amazonプライム会員の方は、Amazon Musicで聴くことができます。

「2022.05_Pop Life in Birdland」（選曲：ソト）

M01. PRINCE／Pop Life
M02. PRINCE／Adore
M03. George Michael／Faith
M04. Madonna／Take a Bow
M05. Lou Reed／Walk on the Wild Side
M06. The Clash／Lover's Rock (Remastered)
M07. Bruce Springsteen／Born to Run
M08. Paul Mccartney & Wings／Bluebird
M09. Patti Smith／Birdland
M10. ハンバートハンバート／プカプカ
M11. Beck／Up All Night
M12. Justin Timberlake／Can't Stop the Feeling!