“かじき釣り”――Birders' Songs（バーダーのためのプレイリスト）006
※写真はカンムリカイツブリ
愉しいかじき釣り、と野鳥の関係。
インドア派／文化系バーダー（野鳥愛好家）によるブログ「ソトブログ」が、探鳥行に出られない日に部屋のなかで、クルマのなかで、通勤中の電車のなかで、野鳥たちに思いを馳せる曲を選曲したプレイリストをAmazon Musicで作成しよう、という試み＝「Birders' Songs」は今回で6回目。
プレイリストのタイトル曲「かじき釣り」は、わたしも以前から好きなミュージシャン、原田郁子による2004年の作品。作詞も手掛ける原田さんですが、この楽曲の作詞は、小説家、いしいしんじ。初期作品から、“どこにでもあるような、どこでもないような場所／世界”を舞台にしてきたいしい作品の雰囲気を思わせる、イマジナリーで愉快な「かじき釣り」を描いた歌詞世界に、野鳥たちは直截、出てはきませんが、漁船「にゅうどう雲」に乗り込んだ「ひげの船長」と「わたし」のまわりの海には、海鳥たちの飛び交う姿が目に浮かぶようです。
わたしは未読ですが、たった今検索してみて、タイトルと、「三崎の若い漁師達は遭難し、マグロになった。海に飛び込もうとする彼らを 咤したのは船頭の大マグロ。励まされ、必死に漁を続けると──(「野島沖」)」という惹句に引き込まれたいしいしんじ、2016年作品（2018年文庫化）。読んでみます。
なお、この歌では、「この銛は逃がさねえ」「竿がしなった」とあるように、突きん棒漁やトローリングが描かれていますが、野鳥との関係では、マグロ延縄漁（カジキも含まれる）による混獲により、海鳥（アホウドリ類やミズナギドリ類）が犠牲になることが問題となっており、様々な方法で混獲回避措置が取られているとのこと。（※日本野鳥の会ウェブサイト「海鳥と漁業の問題」参照）
山本精一のアコースティック・ミニマルの恍惚。
さて、この「かじき釣り」も愉しい1曲ですが、わたしにとって今回のプレイリストを選曲していていちばんの収穫だったのは、M01の山本精一「soup」と、この曲を含むアルバム「palm」。
わたしは普段、気軽な散歩――近くの岬にある海岸林の、標高30メートルほどの小さな山を歩くような――のときには、カメラも双眼鏡も持たず、近くで鳴いているヒヨドリやメジロ、トビ、冬にはジョウビタキ等々、には目もくれず、耳にワイヤレスイヤフォンを突っ込んで、音楽やポッドキャストを聴いている。という、バーダーの風上にもおけない人間なのですが、アコースティックギターのソロによるミニマルで静かな演奏のこのアルバムを、ごく小さなヴォリュームで聴きながら山歩きをしていると、鳥たちのさえずりや地鳴きを含む自然音とマッチング、というか混濁して、とても心地よい。ということを発見したのです。
さて、話がミニマルで私的なフェティッシュに脱線してしまいましたが、これからも「鳥」「bird」といった検索ワードに頼らず、Birders' Songを選曲していきたいと思います。「Birders' Songs（バーダーのためのプレイリスト）」という記事シリーズは、毎週月曜更新予定です。次回もお楽しみに！
プレイリスト「2021.12_かじき釣り」
※以下、選曲は全て、「演者／曲名」で表記しています。
※プレイリストのリンクをクリックすると、Amazonプライム会員の方は、Amazon Musicで聴くことができます。
「2021.12_かじき釣り」（選曲：ソト）
M01. 山本精一／soup
M02. 原田郁子／かじき釣り
M03. MU-STARS／はじまりのうた feat. 二階堂和美
M04. Mari Pokinen／Tanan Sind
M05. Catherine Feeny／New York in the Spring
M06. Maps & Atlases／You And Me And The Mountain
M07. Blu DeTiger／Figure It Out
M08. OWEN／Under The Blanket (The Smoking Popes)
M09. Algernon Cadwallader／Parrot Flies
M10. Someone Still Loves You Boris Yeltsin／Fly By Wire
M11. 寺前未来／南の森
M12. 蓮沼執太／Sunny Day In Saginomiya
M13. Jesse Novak／Flying（Music from the Netflix Original Series“BoJack Horseman”)
M07. Blu DeTiger「Figure It Out」のオフィシャルMV。この"Birders' Songs"でBlu DeTigerを選曲したのは2回目。NY出身、Z世代のベーシスト／SSW。鳥とは全然関係ないのですが、ギターレスのポップなインディーロックで、好きな１曲。
M01.山本精一「soup」収録のアルバム『palm』。山本精一の活動やリリースは多岐にわたり過ぎていて全く追いきれないのですが、ご本人によるウェブストア「Physical Fantasia」（『palm』の扱いはありませんが）が愉しそうです。
【Amazon Music オフィシャルサイト】
Amazon Music Prime
Amazon.co.jp: Amazon Music Unlimited
【当ブログの「Birders' Songs」および、音楽、野鳥観察についての記事一覧はこちら。】
