ソトブログ

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日々のレッスン #014――“大きな手(The Big Hand)”

 

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 カズヒコがCOVID-19陽性となり、カズヒコも含め家族で自宅待機。小学一年生のチャーちゃんも、学校支給のタブレットでリモート授業となった。端末は政府/文科省による「GIGAスクール構想」の施策で一番よく見かけるマウスコンピューターのWindowsタブレット、「Mouse Pro-P101」というシリーズ。型番はいまこれを書くために調べたし、「GIGAスクール構想」という教育政策の本質もわたしにはよくわからない、ICTとかDXとかの流れで文教分野でもコンピューターに慣れ親しむというのか、インターネットやプログラミングを学んだり――そこへちょうど、というと語弊があるがコロナ禍がやってきて(しかしそれは構想の外=想定外だったはずだ)、施策によって整備された端末がリモート授業に使われたりしているのだろう。

 

 先日の忘年会でみんなにいったとおりに、チャーちゃんとわたしは今年の数日間、一緒にストレッチ&ヨガを続けた。今や経理事務が板についたわたしだが、元々はスポーツジムのインストラクターだったのであって、毎日自分の身体を動かす、というより整えておくことにはずっと関心があり続けてきた、けれど体系的なトレーニング方法を組み立てるのは昔から不得手だ。その代わりに好きなのは、例えばこんな「大きな手(The Big Hand)」だ。

 

視覚化(ヴィジュアライゼーション)

 

 走ることで生じる自然な意識の流れがある。ランニング中に頭をよぎる志向の流れを自覚できる人は心地よい驚きを感じるだろう。こうした意識の状態を高めるツールとして、私はさまざまな誘導イメージを用いる。その筆頭は名づけて「大きな手(The Big Hand)」だ。
 このエクササイズでは、背中全体に添えられた大きな手に後押しされるのを視覚化しながら、シャッフルやフレッシュスイングで走る。疲れを感じたら、その手にもたれてみよう。
 もうひとつの視覚化は、髪の毛の上からあなたを直立させる天空の鈎(スカイフック)を心に描くものだ。それはあなたをつかんだまま、地面の上を引っ張っていってくれる。

 

マイク・スピーノ『ほんとうのランニング』Beyond Jogging : The Innerspaces of Running(近藤隆文訳、木星社)より

 

 とにかくデイリーなストレッチのルーティンも、自分では最適解を得られないので先達に頼る。いまのわたしのメンターは、スポセンの先輩でゴンダさんの門下生のリコさんだ。リコさんのストレッチはご本人の体操競技およびヨガ修行の経験のミクストで、彼女のYouTubeチャンネルは一動画につき数百万再生レベル。女子サッカー部に所属していた学生時代はチームのトレーニングメニューで、「どんぐりのスポセン」に勤めていたころはスポセンのそれでこと足りていたが、退職後はもっぱらリコさんの動画がテキストだ。リコさんに直接教われればいいところだが、彼女はいまテキサスにいる。

 

 画面の向こうのチャーちゃんの野那先生とクラスメートたちの姿は、低スペックPCのMouse Pro-P101だからかジャギーの出た粗い動画だが、それでもタブレットの音は意外と悪くなくて臨場感がちゃんとある。それにこちらはオトナにもコドモにも物珍しさがあってチャーちゃんに訊いたわけではないが学校での授業よりリラックスした、娯楽めいた愉しささえあるんじゃないだろうか。何より野那先生の授業での落ち着いた振る舞いが素晴らしくて、先生はまだ採用三年目とか四年目とかのはずだが学校生活、すなわち社会生活にいまだ馴致していない小学一年生を上手にハンドリングしている――なんてわたしが上段から評価めいたことを思うのもはばかられるくらいだった。

 

シリーズ「日々のレッスン」について

日々のレッスン」は、フィクションと日記のあわいにあるテキストとして、不定期連載していくシリーズです(できれば日記のように、デイリーに近いかたちで続けていけたら、と考えています)。また、それにApple Musicから選曲した<野鳥音楽>プレイリストを添えた「日々のレッスン ft. Bird Songs in Apple Music」を、月1、2回のペースで更新しています。

 

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