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【レビュー】“コクヨもいいけどナカバヤシもね。”――ナカバヤシ野帳「レベリングノート スリムA6」の実力は?

 

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Review-Nakabayashi-Leveling-Note

ナカバヤシにもある、あの「野帳」。

 測量野帳といえば、コクヨのロングセラー商品であって、その歴史は60年余(1959~)。しかし、同じく老舗文房具メーカーナカバヤシにも、ほぼ同種同様の製品があります。

 その名は「レベリングノート スリムA6」(左記リンクはナカバヤシ公式サイトへ)。

 

 サイズも、

 ・外寸(表紙):H165mm×W95mm
 ・内寸(本文):H160mm×W91mm

 というのはコクヨ測量野帳と全く同じで、厚みはナカバヤシのサイトによれば、本文サイズ:6mmとなっていて、これはコクヨのサイトにある外寸:6mmとは異なるように思えますが、実測してみたところどちらも外寸で6mmのようです。ページ数はどちらも40枚、80ページ。ただし後述する理由でナカバヤシの「レベリングノート スリムA6」(以下、主にナカバヤシ野帳と呼称します)の方が厚みを感じます。

 

ナカバヤシ「レベリングノート スリムA6」とコクヨ「測量野帳」の違い。

KOKUYO-Nakabayashi

 

 わたしにとっての結論から先に言っておくと、コクヨの「測量野帳」(型番「セ-Y3」のSKETCH BOOK)、ナカバヤシの「レベリングノート スリムA6(方眼罫 3mm)」。そのどちらも気に入って使っています。しかし両者には、見逃せない違いもいくつかあって、思いつく限りで以下の通り。

 

  1. 表紙の色
     コクヨの原色に近いグリーンに対して、ナカバヤシ野帳は黒に近い茶系(型番: LBN-SA601H-Dの方眼罫のもの)。わたしは手許に持っていないけれど、コクヨの、デスクワークや日常のシーンでの利用を意識したグレー方眼罫で<スタイリッシュカラー>と謳われたラインナップの、「チャコールブラック」(型番:セ-Y7D)に近い色に見える。また、ナカバヤシ野帳には「水平測量罫(横22行)」(型番:LBN-SA601L-DB)もあり、わたしは実物を見たことはありませんが、こちらはダークブルー系。

  2. 表紙のロゴ
     ナカバヤシは商品名の通り「LEVELING NOTE」と金の箔押し。「方眼罫」「水平測量罫(横22行)」ともに同じこのロゴ。コクヨは、罫線に測量方法に応じた「レベル」「トランシット」「スケッチ」の3種類のラインナップがあり、各々「LEVEL BOOK」「TRANSIT BOOK」「SKETCH BOOK」と表記が変えられている。こちらも金の箔押し。

  3. 表紙の素材、質感
     ナカバヤシ野帳は「印刷PP貼り表紙」同社サイトより)。おそらく紙クロスの表紙にPP加工(ポリプロピレン加工)を施したものだろう。対してコクヨ測量野帳はPPの掛けられていない紙クロス装
     
  4. 製本方法
     ナカバヤシ野帳は中綴じ。同社サイトでは「糸綴じ」とのみ書かれているが、ノート全体の中央のページとなる見開きで糸綴じした、所謂「中綴じ」である。対するコクヨは「かがり綴じ」。コクヨのサイト、「コクヨのホンネ15/「測量野帳 工場見学」によれば、各々糸綴じした5つの折を、かがり縫いしている。コクヨ野帳を開くと確かに5ヶ所の見開きに綴じ糸が見える。

    yacho-thickness中綴じ製本のナカバヤシ野帳(上)と、かがり綴じ製本のコクヨ測量野帳(下)


     また、コクヨ測量野帳は、表紙と本文の合体に、上製本に使われる所謂「見返し加工」が採用されていて、本文と表紙のあいだに「見返しの遊び」があるが、ナカバヤシ野帳にはそれがない。

    mikaeshi-hikakuコクヨ測量野帳は見返し加工により、表紙と本文が貼り付けられている(左)。ナカバヤシ野帳はそれがなく、表紙と本文は糸で縫い付けられているのみ(右)

ナカバヤシ野帳「レベリングノート スリムA6」の長所と短所。

ナカバヤシ野帳の長所

 このうち、ナカバヤシ野帳「レベリングノート スリムA6」のアドヴァンテージは、「3.表紙の素材、質感」で挙げた、

表紙のPP加工

 だと言えます。コクヨ測量野帳は、(現在ではオフィスワークなど屋内での使用も含めた様々なシーンで利用されているけれども)本来、“測量”というタフな現場での使用を想定しているにもかかわらず、紙クロスの装丁は背表紙や角が破れやすい、というクリティカルな欠点を持っています。一方、PP加工されたナカバヤシ野帳の表紙は丈夫で、水濡れなどにも強い。特にわたしのように、1冊をすぐに使い切らない(仕事用で数ヶ月で1冊、プライヴェートでは1冊を1年以上使うことも。)ような使い方では、経年劣化に強い丈夫な装丁に利があります。

 但し、PP(ポリプロピレン)はプラスチックの一種であり、それを使用することには環境負荷の問題もあります。その点を顧慮して自身の著作にはPPを掛けないで欲しい、という作家の方もいるほどです。ただ、わたしの(付け焼刃で)調べた程度では、その真偽というか、ノートや書籍にPP加工することが環境にとってどれほど望ましくないのか(あるいはそれほど問題がないものなのか)、結論は持てませんでした。

ナカバヤシ野帳の短所

 一方、ナカバヤシ野帳のはっきりとした欠点は、「4.製本方法」の、

・「中綴じ製本」であること、及び「見返し加工をしていないこと

 でしょう。40枚80ページで6mmという、それなりの厚みのある本文用紙をいっぺんに綴じているため、開きにくいのです(見開いた状態で手を離すと、閉じていってしまう)。また、ぴったり閉じにくいため、前述したように実測の6mmよりも厚みを感じます。A5やB5など、もう少し大きなサイズのノートならあまり気にならないかもしれませんが、A6スリム(H160mm×W91mm)というコンパクトなサイズのためか、余計に開きにくく感じます。そして中央ページから外縁に行けばいくほど、左右見開きの段差ができます。対して、かがり綴じのコクヨ測量野帳は、どのページも非常に開きやすい。そして5つの折に分かれているため、中央の段差も比較的(かなり)小さいのです。さらに、表紙との接合において補強度を増す見返し加工がないのは、耐久性の点で問題かもしれません(長期間使ってみないとわからないが)。この点は、使う人、使い方によってはナカバヤシ野帳の大きなディスアドヴァンテージであろうと思います。

 

ナカバヤシ野帳「レベリングノート スリムA6」は、野帳の選択肢として十分に「使えるノート」。

Leveling-Note今回のレビューのナカバヤシ野帳「レベリングノート スリムA6」の写真の表紙に貼っているステッカーは、和歌山県みなべ町のアウトドア系ブランド、「OUTING DAYS」さんのもの。以前書いた、双眼鏡の記事のなかでで紹介した和歌山県田辺市のアウトドアショップ「STOCK OUTDOOR」さんでフライヤーとして置かれていたもので、実はまだ、同社の製品を購入、使ってみたことはないのですが、ロゴに惹かれて野帳に貼って使っています。「水さえあれば梅ごはんが食べられるアウトドア食料「ウメ缶®︎どんなときもウメとごはん」」など、魅力的な商品が取り揃えられた同社製品も、近いうちに試してみたいと思っています。

 全体的にみて、コクヨ測量野帳の方が細部まで行き届いたデザイン性、完成度の高さが感じられますが、単純な日常のメモ用のノートとしては――そしてそれはわたしの使い方ですが、前述の長・短所を考慮しても、使用感にストレスになるほどの違いはない(と、わたしには思えます)。そんなわけで、わたしの場合は1冊を使い終わるのに期間のかかる、プライヴェート用の覚え書き/メモランダムとしては、現在のところ、ナカバヤシ野帳「レベリングノート スリムA6」を使っています。価格もそう変わらない(メーカー希望価格は、コクヨ(通常タイプの測量野帳):240円+税、ナカバヤシ:180円+税)ので*1、今回取り上げた両者の違いを考慮した上で、野帳の選択肢として十分に「使えるノート」であると思います。

 

【こちらは本文中でも触れた、コクヨ測量野帳の、グレー方眼罫のスタイリッシュカラー、「チャコールブラック」】。

 

【以前の記事から:「近くを見れる双眼鏡」PENTAX PapilioⅡの紹介と、ストラップのアレンジについて。】

【レビュー】驚異の最短合焦距離50cmで「立体視できるルーペ」な双眼鏡、 PENTAX PapilioⅡのストラップをカスタマイズ。 - ソトブログ

 

【当ブログの文房具についての記事一覧はこちら。】

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*1:※こうしてみると価格はナカバヤシの方が安そうですが、コクヨの方が圧倒的に流通量/流通網が大きく広いので、コクヨ野帳はメーカー希望価格よりもかなり安く買える場合が多いです。