詩 #002―― 「左利き、エナージェルユーロ、0.35mm。」
「左利き、エナージェルユーロ、0.35mm。」
作:津森ソト
エナージェルユーロ、0.35mm。それがわたしの武器だ――、
武器ということばは使いたくない。
むかし、わたしの先輩――編集者の先輩には、
「戦争や武器を連想させる比喩は使わない。」
という矜持があった、
わたしにはそれが恰好良かった、
今でも恰好良いとおもう、
――だから、武器という言葉は使いたくない。
「道具」でいい。
「道具」がいい。だって、道具なんだから。
イメージや、ことばの断片が頭に浮かぶ。
「すぐにそれを捕まえなきゃ。」
――そんなことはおもわないほうがいい。
窓の外の光、窓の外から聞こえてくる、メジロの鳴き声でイメージは搔き消される。
「チー」「チュー」「チィチョチューチュルル」
それでいい。それが世界の本当の姿だからだ。
それがわたしの、本当の姿だからだ。
エナージェルユーロ、0.35mm。
左利きのわたしに、世界の本当の姿を表現させてくれようとする、唯一の道具だ。
唯一だなんていわないほうがいいなら、そんなもののひとつ。
書くもの(ペン)と、書かれるもの(ノート)。
今はそれがあればいい。
エナージェルユーロはゲルインク、キャップ式、使い切りタイプのボールペン。芯交換のできない使い切りのため、ボディに芯が固定されていることから、ペンの「走り」が素晴らしい。
【以前の記事から:4年前に書いた、左利きであるわたしが如何にしてボールペンを選んでいるか、というテキスト(後編もあります)。今でも当ブログのなかではかなり読まれている記事なのですが、わたし自身、今読むと、とくに具体的なペンに触れた後編は、ペンに対する知識や見解の甘さを感じます。左利きにとってのペン選びについては、改めて文章にしたいと思っています。】
左利きの左利きによる左利きのためのボールペン選び。【前編】feat.“冷たい雨に撃て、約束の銃弾を” - ソトブログ
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