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地元の低山に登り、カフェで映画談義――。日常を描いた小説集『踊る回る鳥みたいに』、リアル店舗展開中です。【書店以外編】

 

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「そういう声に、みんなもっと従うべきなんですよ」
 とわたしはいった。聞いていたハジメちゃんとしおりさんがどういう反応をするか、わたしは会話の先を想像しないわけではないが、当たったことはない。ハジメちゃんは、
「でも結局はそれ、自分なんでしょ?」
 といった。「侑ちゃんは人に興味があるように見えて、本当は自分にだけ興味があるんだよね」
「そうだっけ。それって、」
「悪口じゃないよ。そういうところがわたしは楽だったんだよ」
「わたしはでも、いつもそんな感じだよ」としおりさんはいった。「絶えず自分の心や身体と対話してる」
「ああー、お姉ちゃん」とハジメちゃんはいった。どういうニュアンスの詠嘆なのか、姉妹ってそうだよな、と思った。お姉ちゃん(ハジメちゃんにとってのしおりさん)に対する予断がじゅうぶんにあり、お姉ちゃんがどういおうと、自分にとってのお姉ちゃんの範疇で処理できてしまう。それが本当のお姉ちゃんかどうかわからない。わたしと妹の関係もそうだよな、と思う。
 しおりさんのマッサージのあと、いつものカフェでお茶していたらハジメちゃんがひとりで入ってきて、誰かと待ち合わせというのではなくハジメちゃんもただお茶しに来たようで、わたしたちのテーブルに座った。
「あれ、ハジメもここの餡蜜好きだったの?」
「餡蜜? わたしそれ食べたことない」
「うそー。ここへ来て餡蜜頼まなかったことないですよね?」
「ねぇ」
「そんなに?」
「そんなに」


津森ソト『踊る回る鳥みたいに』(Soto Refireshment Books、2022年)より

 

Kindle Direct Publishingで出版した拙著を、リアルで売りたい、その理由。

 

 わたしの実家である佐賀県、そして現在暮らしている和歌山県――明記はしていないものの両者をモデルにした地方都市で暮らす、30代の女性の日常を描いた小説集『踊る回る鳥みたいに』。
 本書は、Amazonの、書籍をオンデマンド出版できるサーヴィス「Kindle Direct Publishing(KDP)」利用して、出版したものです。それを、AmazonやSTORESといったECサイトだけでなく、現実の場所、リアルな店舗で手に取っていただけたら――。

 そんなふうに思い至ったのは、上述の通り本書がわたし自身が暮らす街の、わたし自身の日常に根ざした物語であること、30代後半から40代半ばの現在までにわたしの生活実感を多分に反映して書いたものであること:だとしたら、オンラインという方法だけではなく、受け手(読者)をより身近に感じられる方法で販売するべきではないか、いや、「べき」というより、
「そうしたいのだ。」と願ったからです。

 

野鳥/映画/登山/アロマテラピー/そして日常――そんな小説集『踊る回る鳥みたいに』、リアル店舗展開中です。【書店編】 - ソトブログ

 

 先には上記の記事の通り、本書をお取り扱い下さっているリアル「書店」さん、3つの店舗を紹介させていただきましたが、今回は、書店以外のお店、喫茶(カフェ)とアウトドアショップ、という、毛色の異なる2つのお店です。

 

<紀南>上富田町「喫茶山猫」

【喫茶山猫】Instagram:https://www.instagram.com/yamanecocco/

 

 和歌山県紀南の最大都市(といっても人口7万弱ですが)、田辺市のお隣、上富田町にある喫茶/カフェ。田辺市に隣接した上富田町の高台、「南紀の台」の住宅街に、隠れ家のように佇む、けれどグリーンの外壁と、猫のイラストのサイン灯がひときわ存在感を放つ「喫茶山猫」さん。店主は紀南、いえ県内でも随一のベースレス・ポップ・トリオ、「メトロロ」(公式Instagram)のソングライター/シンガー/ギタリストでもあるアニさん。

 十数年前にわたしがイベントでDJなどをやらせていただいていた際に、ご一緒する機会があった頃からの旧知ではあるのですが、当時から、歳だけは少し年長のわたしから見ても仰ぎ見る存在というか、とりわけ物語的/幻想的/神話的ともいえる歌詞世界には、日常の延長の地べた、半径2、3メートルのことばでしか文章を綴ることのできないわたしにとっては――、憧憬に近い気持ちを抱き続けてきた方です。

 そんなアニさんが、今年(2022年)2月にオープンされたという素敵な喫茶店が、「喫茶山猫」です。おいしい日替わりランチにコーヒー、手作りケーキ。そしてアニさんの蔵書による本棚、オンライン書店『瑞花堂書店』さん選書による本や、様々な作家の方の雑貨の販売など。それら全てが、違和感なく調和することで、「喫茶山猫」という小宇宙・空間の居心地のよさを作り出している、そんなお店です。
 わたしの本が、そんなミクロコスモスの邪魔にならなければと思いつつも、こちらでは未知の方に手に取ってご購入下さる機会がすでに何度かあり、たいへん有難く思っています。

 

店舗情報:喫茶山猫Instagram
和歌山県上富田町南紀の台5-39
Open:9:00-17:00(日曜定休)
※その他店休日、イベント開催等詳細は喫茶山猫さんのInstagramをご確認下さい。

 

<紀南>田辺市「STOCK OUTDOOR(ストック アウトドア)」

【STOCK OUTDOOR】Webショップ:https://stockoutdoor.theshop.jp/

 

 数年前から日本野鳥の会に所属し、野鳥観察を始めとしたアウトドアに親しんでいたつもりの不肖・わたしですが、田辺市、あるいは紀南のアウトドア・アクティビティの拠点/発信基地ともいえる存在のこの「STOCK OUTDOOR」さんを昨年(2021年)まで知らなかったのは、無知蒙昧の謗りを受けても仕方がない、――それくらいのスポットだと感じています。

 話を急ぎすぎました。店主は新田浩司さん。豊富な知識と、ネイチャーガイドの資格等も持たれ、様々なアウトドア・イベントの企画や地元情報誌への寄稿など、八面六臂の活躍をされながら、柔らかな物腰と優しい語り口で、訪れるお客さん、地元アウトドアラーからも愛される存在。わたしの初歩的な質問にも、いつも丁寧に答えて下さいます。今年の春、拙著『踊る回る鳥みたいに』の宣伝フライヤーを作成したときにも、快く置いて下さり、それからわたしがいくつかの店舗で本を扱っていただけるようになって、

「やっぱり、山のこと、鳥のこと、自然のことを書いているこの本を、ストックさんにも置いて欲しい!」

 と思いお声がけしたときにも、引き受けて下さいました。一見おっとりした語り口、風貌からは想像できないくらい、野心的な試みを続けられている新田さん/「STOCK OUTDOOR」さん。そんなお店に本書を扱って下さっていること、本当に僭越ながら、感謝。こちらでも本書が、<新田的ストック世界>にどれくらい馴染んでいるか心許ないのですが、「アウトドア好き、山好きや鳥好きで、しかも小説が好き」と言う方がいらっしゃいましたら、ぜひ、こちらで手に取っていただけたら嬉しく思います。

 

店舗情報:STOCK OUTDOOR(ストック アウトドア)WebショップInstagram
和歌山県田辺市下万呂577-1 サンフェストプラザ1F
Open:11:00 -19:00(火曜定休)
※その他店休日、イベント開催等STOCK OUTDOORのWebショップ、Instagram等をご確認下さい。

 

和歌山・紀南にお越しの際はぜひ、上記のお店へ!

 

 リアル店舗での販売は、すべて、<野鳥文学>の目線で文学作品を紹介するミニ・エッセイ「<野鳥文学>の世界へようこそ」とその表紙代わりの野鳥写真ポストカードを付録として、850円(税込)で販売しています。どうぞよろしくお願いします。
 また、同ヴァージョンはわたし自身のオリジナル・ストア「Soto Refreshment Books」(STORES)でも通販していますが、こちらは850円+送料150円となります。和歌山にお越しの際はぜひ、リアル店舗で実物を見て、お買い上げいただきますようお願いします。どちらも個性的で素敵な書店さんばかりです。

 

Amazonでの販売はこちら(ペーパーバック書籍:750円、電子書籍:250円)。電子書籍版はKindle Unlimited対象タイトルです。

 

【以前の記事から:書店での取り扱いはこちら。】

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