ソトブログ

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現実のオンライン――『おじいちゃんの くるま どこ?』(作・みねお みつ、「ちいさなかがくのとも」2022年3月号)を読んで。

 

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Review-Kuruma-Doko

 

 福音館書店の月刊絵本には、折り込みの小冊子が付録としてつけられていて、冊子には読者の感想などを掲載するお便りコーナーがあります。わたしも月刊「ちいさなかがくのとも」2020年4月号『ちょうが すきなもの しってる?』(作・松岡達英)の、当時4歳の次男と読んだ感想を送っていたのですが、それがしばらくの時を経て、このたび掲載された、ということで、編集部より掲載誌「ちいさなかがくのとも」2022年3月号『おじいちゃんの くるま どこ?』(と、もう一冊の絵本)を送っていただきました。

 

わたしたちの想いとそれを形にしたものが、現実のラインに乗って。

 

おじいちゃんの くるま どこ?』Where is Granpa's Car Now?(作・みねお みつ、月刊予約絵本「ちいさなかがくのとも」2022年3月号・通巻240号、福音館書店)

 

www.fukuinkan.co.jp

 

 オンライン、というと今は瞬時に、インターネットによって世界中がコンピュータ・ネットワークで繋がっていることをのみ、考えてしまうけれど、『おじいちゃんの くるま どこ?』では、祖父母の家となっちゃんの家が、道路という社会インフラによって、一本の線(ライン)で繋がっている。もちろん、現実も同様である。
 わたしが先日まで読んでいた坂口恭平『土になる(当ブログでの同書のブックレビューはこちらでは、人間である「僕」=坂口恭平さんが、畑=土を通じて生きものたち、自然、世界と繋がっている――坂口さんはそれを「僕が土になった」と表現している――ことが繰り返し語られている。
 我が家では長男と次男が購読している福音館書店の月刊絵本や、他に注文した本を、街の小さな本屋さん(この街で後半生を暮らした博覧強記の偉人・南方熊楠が創業者と懇意にしていたという、大正時代創業の老舗書店)の営業の方が、毎月、自宅まで無料で配達して下さっている。

 

CarNow-Misaki近郊の岬から望む夕暮れ(2021.12)

 

 『おじいちゃんの~』のなっちゃんとお父さんと同じように、絵本(次男の読む「ちいさなかがくのとも」「こどものとも」や、長男の「たくさんのふしぎ」)がこの街の中心部(旧市街)から、わたしたちの家まで運ばれてくる道を、わたしも思い浮かべてみることができる。近所の海岸――本邦におけるナショナルトラスト運動の嚆矢のひとつとなった岬――の後背林の、標高約30メートルの小さな山頂から、俯瞰してみることもできる(この高さでは、高層建築のないこの小さな街でも、数キロ先の書店までは望めないけれど)。
 わたしと次男が福音館書店へ出した「おたより」(感想文)も、投函したポストから郵便局によって、おそらく陸路、一筆書きのラインに乗って、東京の編集部に届けられた。そしてインターネットがWi-Fiで無線でオンラインできるように、『土になる』の坂口恭平さんが畑をしながらドゥルーズ/ガタリの『千のプラトー』を想起しつつ、「植物、地中の微生物、虫、そして鳥」たちとの交歓を感じているように、わたしたち親子の想いも時と空間を移し動いて、編集部へ届けられた
 そして今、こうして書いているテキストは、オンラインの上に置かれている。それが誰かの目に留まるとき、わたしの思いは見えないラインで繋がっている――。

 

絵本というメディア、そしてそれがわたしたちのもとへ届くこと。

 

 わたしが感じることの出来たそんなことの全て(そしてわたしが読み取れなかったもっと多くのこと)を、絵と文章で、たった24ページの絵と文章で十全に伝えてくれる『おじいちゃんの くるま どこ?』という絵本、そして絵本というメディアは本当に素敵だし、それを作っている作家、出版社(編集部、営業部etc.)、デザイナー、製紙会社、印刷会社、製本業者。また本を全国の書店まで流通させ、運んでくることに携わる全ての人々に敬意を表したい。そんなことを改めて思い起こさせてくれる、素敵な号の「ちいさなかがくのとも」の折り込み冊子に、わたしの拙文が載っているのを眺めていると、とても、なんだかうれしい。 

 

 編集部からプレゼントして下さったもう一冊の新刊絵本、『つばきレストラン』(作・おおたぐろ まり)についても、改めて感想など、書いてみたいと思っています。

 

【福音館書店公式サイト「ちいさなかがくのとも」案内ページ】

 

www.fujisan.co.jp

福音館書店の月刊絵本は、書店店頭で購入できる他、上記「fujisan.co.jp」や、幼稚園・保育園からの申し込みで購読もできるようです。我が家では本記事で書いたように、地元書店で注文しています。

 

【以前の記事から:福音館書店の2冊の本『草木鳥鳥文様』『さわる たんけんたい』について、2021年の私的ベスト本として取り上げました。】

写真/絵画/散文/野鳥/文化人類学/そしてひちょり。――2021年ソトブログのマイ・ベスト・ブックス。 - ソトブログ

 

2021年マイ・ベスト・ブック:絵本編『さわる たんけんたい』(月刊「かがくのとも」2021年12月号・通巻633号)/触る愉しさの再発見から、想いは戦場へ行った――。 - ソトブログ

 

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