ソトブログ

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片耳イヤホンから、聴こえるか聴こえないかの音量で、音楽を聴く。――Bluetoothヘッドセット「Mpow EM6」レビュー。

 

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お気に入りの、「500円のスニーカー」。

 

私にとってこのところプライベートで履いている靴のなかでいちばんのお気に入りというと、この、UNIQLO Uの500円で買ったスニーカーということになります。500円、というのはユニクロで買い物をしたことがある人ならわかると思うけれど、ワゴンのなかでとにかく売れさえすればいい、ということで「投げ売り」されていた値段であって、私はこのスニーカーの元々の価格を知りません。特に知る気もありません。

 

 

アッパーからソールから中敷き、紐にいたるまで真っ白なスニーカーで、アンダーティーンのふたりの息子と屋外で戯れることになる私の白い靴は、すぐに泥々になります。だから当初は、「あーやっぱり失敗したかな。“安物買いの銭失い”そのものだよ」と思いましたが、「どうせ安物だから」という(私自身)の気持ちを逆手にとって、マメに丸洗いをするようにしてみました。もともと几帳面でも身だしなみを整えているわけでもない私は、仕事で履く革靴もオフの日のスニーカーも、手入れは無頓着そのもの。革靴こそ、最近ようやく靴ブラシくらいはかけるようにはなりましたが、スニーカーなどは今も履きっぱなし。本当に思い出した頃に水洗いすることが(ごく偶に)あるかどうか、というくらいなのですが、この真っ白な靴は、スニーカー用の洗剤でゴシゴシ洗うと、面白いように白くなります。それを干して乾かして、パリッとした状態で履く気持ちよさ。結構な頻度で泥がついたり、下の3歳児に踏まれたりするので、完全に汚れが落ちるわけでないし、すぐにまた汚れますが。

 

日頃履く靴など数足しか持っていませんが、そのなかでも、こうして手をかける頻度がいちばん高くなったことで、500円という価格とは無関係に、現在、私のなかでは最も愛着のある靴(あるいは身につけるもの)になってしまいました。

 

――さて、ここまでは前置きです。

 

 

他の人との比較をしていたらキリがないし、(私という個人にとっては)ポジティヴな意味は何もないのでしませんが、私自身の認識では私は音楽が好きな方で、一方でラジオもよく聴きます。そして近頃は、(これは他の人もそうじゃないかと想像するのですが)、スピーカーではなくヘッドホン、イヤホンでそうしたものを聴くことがかなり多くなりました。

 

 移動中やジムでのトレーニング中、様々なシチュエーションがありますが、自宅での家事などしながらの作業中に、今、私がいちばん使っているのが、所謂片耳ヘッドセットです。モノはこちら。

 

片耳ヘッドセット/イヤホンの魅力。――「Mpow EM6」

  

 主なスペック

接続方式 Bluetooth V4.1+EDR
音声圧縮形式 不明
充電時間 約1.0時間
連続通話時間 約6時間
連続音声再生時間 約6時間
待受時間 約150時間

 

決して「完璧な製品」ではないけれど...

 

この「Mpow EM6」、決して完璧な製品でありません。ショッピングモールなどの人混みや、車や人の行き交う歩道など、屋外で試してみたりもしましたが、無線イヤホンにありがちな音飛びはそこそこの頻度で発生しますし、音質は癖のない明瞭なサウンドで悪くなくその意味でヘッドセットとしては及第点ですが、片耳ですからじっくり音楽を鑑賞する用途のものでは、もとよりありません。私自身が例えばジムでランニングをしながら使うのは、Ankerの「SoundBuds Curve」というBluetoothイヤホンですが、これに「Mpow EM6」が取って替わることはありません。

 

「Anker SoundBuds Curve」。IPX5防水規格対応、軽い付け心地のシリコン製イヤーフック、圧縮はapt-X、最大12.5時間の連続再生と、スポーツ用としても、移動中の音楽再生用としても非常に使い勝手のいいBluetoothイヤホン。このことばはあまり好きではないのですが、コストパフォーマンスも高い、と思います。 

 

 

片耳ヘッドセットゆえの気軽さ、身軽さ。

 

イヤホンの現在のトレンドといえば、AppleのAirPods以降急激に普及した感のある、両耳を繋ぐコードすらない「完全ワイヤレス」です。ただ、私自身は、まだまだ価格が高いのと、連続再生時間の短さ(ケースによる充電ができるので、十分実用的だとの声も多いですが)、何より「失くしてしまう」ことへの心配が大きくて、買うことができないでいます。もちろん私自身この文章のはじめにスニーカーについて触れたように、どんなモノに対しても、愛着を持って大切に使うことが大事だとは思いますが、不注意だったりおっちょこちょいだったりする性向、性癖はなかなか修正しがたいものがあります。

 

実際、この「Mpow EM6」も、一度シャツのポケットに入れたまま洗濯してしまったことがあります。これは、高い安いの問題じゃなくて、私の問題ですが、「Mpow EM6」くらいのもらなら、それで壊れてしまっても諦めもつきますが、2、3万するような現在のハイエンド完全ワイヤレスイヤホンだったら、(私なら)正直、ちょっとキツイと思います。幸い、「Mpow EM6」はそのまま数日放置して乾かしたら今も使えているのですが、まぁ、これでいつ壊れてもおかしくないわけで。それくらい注意して扱うのは当たり前だ、と言われればそれまでですが、そうした意味でも、気軽に使える値段であり、片耳であるがゆえに身軽に使える「Mpow EM6」(に限らず、比較的リーズナブルな片耳ヘッドセット/イヤホン)の良さがあると思っています。

 

「聴こえるか聴こえないかの最小ヴォリュームで音楽を聴く」という愉しみ方。(するかしないかは別にして)

 

Amazonなどの製品紹介にあるような「羽毛のような」付け心地、というのは誇大ですが(笑)、ある意味スカスカにも思える軽さ(4g)、小ささは魅力的。そして外れにくいのに装着感も悪くない。使い勝手としても、悪くないヘッドセットだと思います。

 

そしてヘッドホン、イヤホンというと突き詰めるとその音質を追求することになるのは道理ですが、音楽との付き合い方において、そのために必要なヘッドホン、イヤホンやスピーカーといった道具との付き合い方において、それだけに縛られる必要はないと思うのです。こうした音響機器のレビューで、音質面について詳細なレビューがされているのを読んでいると(もちろん私も購入・検討の参考にしてはいますが)、時々思い出すエピソードがあります。 

 

10年以上前、確かNHK教育テレビで放送されていた『美と出会う』という美術ドキュメンタリーでだったと思うのですが、美術家の大竹伸朗氏が(当時の)個人的なブームというか習慣として、ラジカセで、聴こえるか聴こえないかの音量で音楽を聴くのが愉しいんだ、という話をされていたのです。音楽というとできるだけ高音質で、大音響で聴くのが最上の体験だとばかり考えていると、そうした発想は出てきません。しかし音楽との付き合い方は色々なものがあっていい。音質至上主義で、「ショボイ」音質の安物の機器を否定することはたやすいですが――そしてある意味では、間違っていないのだとは思いますが、「聴こえるか聴こえないかの最小ヴォリュームで音楽を聴く」という愉しみ方がこの世に存在するということを意識してみると、もっと違った景色が見えてくる気がします。

 

デジタルの時代になった今、手近な再生機器とイヤホンで最小ヴォリュームで音を聴いてみて下さい。ほとんどの機器は、「聴こえるか聴こえないか」の大きさで音を聴くことはできません。それはこの「Mpow EM6」も同じではあるのですが、「Mpow EM6」は、実はイヤーピース(耳の穴に入れる部分)を外しても装着することができ、そうしてみると、(密閉されなくなるために)実際に聴こえる音が小さくなります。普通に使おうと思えばそのぶん音量を大きくしなければならないので、例えば屋外でヘッドセットとして使おうと思うと実用的ではありませんが、静かな部屋でラジオを聴くような用途には問題ありませんし、上述したような「聴こえるか聴こえないかの音量で音楽を聴く」なんて特殊な愉しみ方だって可能です。もちろん、後者のようなことを実際にする人はなかなかいないでしょう。私だってたぶん、日常的にはやりません。

 

それでもそういう遊びのような、余白のような愉しみ方も、機器の使い方として、音楽の愉しみ方としてあるというのだということを、思い出させてくれたというだけでも、私にとっては買ってみてよかった、と思っているもの。それがこの「Mpow EM6」という片耳ヘッドセットです。そうした意味で、「丸洗いするというエンターテイメント」を与えてくれた500円スニーカーも、1,000円余りで購入したこのヘッドセット(2018.6.24現在のAmazonでの価格は1,299円)も、私には、非常にフィットしたアイテムだったと言えるのでしょう。

 

音楽との、ガジェットとの、道具との、オルタナティヴな付き合い方。

 

同梱物として専用充電器2個(上記写真の同じものが2個入っている)、イヤーピース2個(大・小)、そしてこのキャリングケースが付属しているなど、この「Mpow EM6」、実用面でもちゃんと充実しています。

 

そしてまた、(それなりに事前にレビューを比較するなど調べはしましたが)片耳ヘッドセットとして、この「Mpow EM6」が、あらゆる製品を比較して他のどれよりも素晴らしい、というつもりはありません。たまたま手にとって、使っているだけ。世のなかには数多のレビューサイト、ブログがあり、どれを買えば、使えば得か、幸せか、そうした情報が溢れています。私のこの文章だって同じようなものだろうし、それを覆すようなことを言えばこうしたレビュー、文章は意味のないものになるのかも知れませんが、私はこうした文章で、

 

「何となく使ってみたけど、意外とこんなふうに使えて、(これを使うことで)こんなふうなことを思えて、悪くなかったよ」

 

くらいのことを書いてみたい、と思っています。何故なら、私がそういう文章を読みたいから。もちろん多くの人にとって、もっと「必要」な情報に絞ったレビューの方がずっと有用で、存在価値も高いでしょう。しかしこの「ソトブログ」は、アザーサイド、オルタナティヴなものであり続けたいと思っています。「オルタナ~」とかいうと、ただいま現在は、ちょっとネガティヴなイメージもあるのかも。でもまぁ、それはそれとして。

 

 

 【これまでの記事より。聴いている音楽やラジオについて】

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