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オトナの自由研究「北陸旅行篇」vol.2――<いしかわ動物園>でトキが見られる!

 

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私たち家族の北陸観光の目玉になった、<いしかわ動物園>の魅力。

 

8月のアタマに2泊3日で行った北陸旅行のなかで、特に印象に残ったのはこちら、<いしかわ動物園>でした。動物園、なんて私のように小学生や小さい子どものいる家庭にとって何も珍しくもないところで、わざわざ遠出した夏休みの旅行先で行くこともないじゃない? と思われるかも知れません。

 

 

しかし、今回宿をとった金沢から車で30分あまり、石川県能美市にあるこちらの動物園を訪れることにしたのは、ここではあの<トキ>が見られるということを知ったからです。

 

トキというとニッポニア・ニッポンという学名や、野生絶滅に至るストーリーから、日本では国鳥でこそありませんが(日本の国鳥はキジ)、ある種の思い入れや郷愁を持って語られるところがあって、私自身、20代なかばの頃、阿部和重の小説『ニッポニア・ニッポン』を読んで、友人たちと当時住んでいた東京から0泊2日の車の旅で佐渡へ行き、トキ保護センターにトキを見に行ったりしたこともあります。

 

 

それはともかく、この一年あまり小3の長男と一緒に少しずつ、バードウォッチングを始めたこともあって、日本でのトキの飼育・繁殖、野生復帰の取り組みが着実に進んでいることを知って、また、その一翼を担っているといういしかわ動物園で、トキを一般公開下で見られるということで、ドキドキしながら見に行きました。

 

いざ、いしかわ動物園へ!

 

観察アイテムとしておすすめの双眼鏡、ペンタックス「Papilio Ⅱ」。

 

観察のお供は今回も、ペンタックスの双眼鏡「Papilio(パピリオ) Ⅱ」。有効倍率6倍と、双眼鏡としても低めの倍率ながら、焦点距離最短50センチという「マクロ観察」に強い唯一無二の特徴を持った機種で、近くのものを大きく、立体的に見ることができる双眼鏡です。これを持ってから、自然観察が一層愉しくなりました。

 

もはや個人的に野外活動の必須アイテムとなったペンタックス「Papilio Ⅱ」。一度改めてちゃんと紹介したいと思いつつ、この分野の造形が浅いのでうまく記事に出来ていませんが、その特性から非常に評判の高い機種ではあります。 

 

例えばこんな、キオビヤドクガエルとか、小動物をPapilio Ⅱ間近で見るとなかなか迫力があるというか、大げさでなく、こちらが小人になったような気分を味わえます。

 

炎天下でも比較的過ごしやすい、いしかわ動物園の展示の工夫。

そしてめちゃくちゃ暑かった今年の夏、猛暑の続いた8月の初旬にあって、このいしかわ動物園が良かったのは、ぐるっと一本道に近いかたちで周回できる順路において、屋外展示と、空調の効いた屋内展示をうまく組み合わせていて、動物園とはいえずうっと真夏の炎天下で歩き続けることにならないような工夫がなされていたところ。やはり屋外では動物たちもさすがに暑そうに見えましたが、室内で休息するトラなどは、すやすやと眠りについているようでした。

 

<小動物プロムナード>にて。穴を掘るマーラ

 

安眠するトラ。ジャマをするのが申し訳なくて、窓越しに少し離れてズームで、そっと撮らせていただきました。 

 

トキを間近で観察できる「トキ里山館」。 

 

そしてこちらが、トキを間近で観察することのできる、いしかわ動物園内の施設<トキ里山館>です。その名のとおり、棚田ふうの、里山の風景を再現した環境が構築されていて、窓越しながらトキを直に観察することができます。

 

 

1999年に国内で初めて人工繁殖に成功していらい、わずかな個体数から繁殖を続け、現在、日本国内のトキは野生下で299羽、飼育下で192羽にまで増えていて(2017年10月現在、いしかわ動物園の展示より抜粋)、いしかわ動物園では10羽が飼育されているそうです。

 

 

息子が熱心に見入っていたためか、ちょうど近くにいらした、自ら日本野鳥の会の会員でもあって野鳥全般にも造詣の深い解説員の方からも、色々なお話を聞かせていただきました。

 

いしかわ動物園にトキがいるのは、石川県がトキの本州最後の生息地であるというゆかりもさることながら、人工繁殖によって個体数の増えていったトキの、鳥インフルエンザなどの感染症による全滅を避けるため、環境省の進めてきた「分散飼育」の一貫だそう。園内にはトキの近隣種がいくつも飼育されているのですが、そうした近隣種の飼育訓練を経て、いしかわ動物園での飼育が開始されることになったようです(2010年から。他に多摩動物公園(2007年〜)などでも)。

 

かつて近世まで、トキが里山に広く分布していたころは、田畑を踏み荒らす「害鳥」であって、また、敏捷性に欠けることもあって、明治以降の乱獲などによってあっという間にその数を減らしたというトキですが、窓越しに園内とはいえそれなりに広い空間をゆったりと歩くさまは優雅でさえあります。

 

多様性のなかを私たちが生きること。

 

こちらは石川県の県鳥でもある猛禽、イヌワシ

 

園内にいたショウジョウトンボ

 

様々な鳥たち、生き物たちが絶滅を危惧される自然環境のなかで、トキが象徴的に手厚く保護され、繁殖、野生復帰への取り組みがなされていることは、ひょっとすると異論があるところかもしれません(数が増えてまた田畑が荒らされるかもしれない、と懸念する声もあるといいます)。しかし実際にここ数年、息子とともに積極的に生き物たちに触れるようになって、月並みですが多様性の維持された、担保された生物界、世界というものの尊さを感じています。鳥や動物や植物たち、小さな虫に至るまで、これまで数十年、その名も知らずに生きてきたことのもったいなさ! そう、もったいないんですよ。せっかく同じ時を生きているのに、彼らのことを知らないなんて。

 

なんか良さげなことを言うつもりは全然ありませんが、私が小さなことで思い煩っているそのときにも、彼らがどこかで息を潜めていたり、広い空を羽ばたいたりしていることを想像するだけで、ちょうど家と学校の往復の日々だったティーンエイジャーの頃に、音楽や書物、テレビや映画といったフィクションの世界だけが「此処ではないどこか」のパスポートだったのと同じように、日々の潤いや救いになるのを実感しています。いくぶん、大げさではありますが、ほんとうに。

 

今私が書いたような、ちょっとおためごかしな話とは無縁の、個人の歪んだ妄想、世界観の拡がる小説世界。そんな小説も自然も、どちらも面白い。

 

 【前回の記事より:金沢観光では兼六園でも、ひょんなことから自然観察が始まりました。】

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