映画レビュー『ディス・イズ・ジ・エンド/俺たちハリウッドスターの最凶最期の日』――世界の終わりはセス・ローゲンの映画みたいに。
ディス・イズ・ジ・エンド/俺たちハリウッドスターの最凶最期の日
原題:This is the End
製作年:2013年
監督:セス・ローゲン、エヴァン・ゴールドバーグ
前回の『釣りよかでしょう。』(人気YouTubeチャンネル)についての記事をはじめ、このブログで何度か言及してきた“ブロマンス”*1と呼ばれるフィクションの潮流。今回はその典型的な作品を紹介します。
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ボンクラ男、セス・ローゲン流のハルマゲドン映画。
ずっと好きで映画を観続けている人はどうだかわかりませんが、私の場合、日常的に映画を観るようになったのはここ数年の話で、だからなのか、基本的には何を選んで観ても、どれも面白い(多少肌に合わないものもありますが)。
それでも少しずつ自分の趣味嗜好というものが出てくるもので、とくに好きなのはアメリカのコメディ映画。そのなかでもカナダ出身のコメディ俳優、セス・ローゲンが出ているものは外れがない。セス・ローゲンのはくるくるの天然パーマで小太りの青年(という歳でもないようですが)で、演じる役はいつも、サブカルチャーやマリファナが大好きで、彼女といるよりホモソーシャルな男同士の付き合いの方が愉しい。(『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』『恋するポルノグラフィティ』など)。*2
そんなボンクラ男ばかり演じているセス・ローゲン。その典型にして究極のひとつが、自ら監督・主演したという『ディス・イズ・ジ・エンド/俺たちハリウッドスターの最凶最期の日』です。タイトルの通り、世界の終わりを描いたいわゆるパニック映画なのですが、主演のセス・ローゲンをはじめ、キャスト全員が本人役で出ているところが面白い。ストーリーは、セス・ローゲンが親友のジェイ・バルチェルと招かれたジェームズ・フランコの新居のホームパーティの最中、ヨハネの黙示録的なカタストロフに見舞われる、というもの。
ボンクラたちが世界の終わりにすることとは?
パーティにはエマ・ワトソンやらリアーナやらマイケル・セラやらスターばかりが来ていて、電柱に串刺しになったり地割れで起きた穴に落ちたりさんざんな形で多くが死んでしまいます。セスやジェイ、家主のフランコのほか、ジョナ・ヒルなどの6人が生き延びるのですが、破滅的な状況のなか、彼らがやることといえば、残った食料のなかのお菓子の取り合い、ホームビデオで自分たちが出た映画の続編撮影、食料や飲料水を危険な屋外に調達しに行くためのクジ引き、一人で寝るのが恐いからと男同士で添い寝、などなど、危機感の感じられないバカなことばかり。
誇張されたギャグの連発だからといって大味かということそうではなく、各人のキャラがうまく出ていて、しかもギャグも相当にきわどい(エマ・ワトソンにレイプしようとしていると疑われるところとか)。そのうえ友情にアクションにラブにハッピーエンドに打ち上げにと、エンターテイメント要素が全部詰まっていながら、「本当に好きなことを好きなようにやってるなあ」と思えるところが素晴らしいです。
世界の終わりが来ても、セス・ローゲンと一緒だったら愉しいかも。そう思わせるブロマンスの帝王(?)です。
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【映画関連のこれまでの記事】
*1:広義には、「2人もしくはそれ以上の人数の男性同士の近しい関係のこと。性的な関わりはなく、ホモソーシャルな親密さの一種である」(Wikipedia「ブロマンス」の項より)と、そうした人間関係そのものを呼称する用語のようです。
*2:あるいはその公開をめぐって米国-北朝鮮の外交問題にまで発展した金正恩の暗殺を描いたスパイ・コメディ、『The Interview』(日本未公開、未ソフト化)の方が、一般的には有名かもしれません。