ソトブログ

文化系バーダー・ブログ。映画と本、野鳥/自然観察。時々ガジェット。

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特別な道具なしでも始められるバードウォッチングの魅力を、初心者Birder親子のカバンの中身を添えてお伝えします。

 

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バードウォッチングのよいところは「ついでに」楽しむことができる点です。通勤や通学のついでに、旅行や出張のついでに。少しだけ余裕をもって出発したり、移動の時間を多めに取っておくだけで、ちょっとしたバードウォッチングができます。双眼鏡があればよいですが、仮になくても、公園の池に浮かぶカモを見たり、街路樹に止まるメジロを見たりと、に肉眼で見える範囲でも十分観察できます。


『はじめよう!バードウォッチング』(文一総合出版)より。(文・秋山幸也)

 

 

初心者Birderだからこそ語れる野鳥観察のススメ。

 

近くの漁港にいたセグロカモメ(だと思います)。こういう見分けが出来てくるのが愉しいのですが、カモメは難しい…。

 

当ブログでは何度か書いてきましたが、私と小学2年になる長男は、今年の1月に参加した地元の自然観察教室の野鳥観察会をきっかけに、初心者Birderになりました。Birder(バーダー)とは、バードウォッチャーのこと。あるいは探鳥家、とも。そんなふうにいうとマニアックだったり、高尚だったりする趣味のように思えますが、さにあらず。基本的には街や自然のなかで、鳥を見るだけです。そう、バードウォッチングという行為の面白さは、ただ、<観る(Watchする)>という行為だけで始まる、成立し得る点にある、と初心者でその魅力にハマりつつある私は思っています。

 

街なかでもカラスやスズメ、ハトやツバメなんてどこにでもいます。そんなこと、<バードウォッチング>なんて意識する前から当然だよ、と私も思っていました。しかし、少しでも探鳥の世界に足を踏み入れてもみると、「ハト」や「カラス」という名前の鳥はいないこと、ハトといっても、ドバトとキジバトでは生態も異なるし、ハシブトガラスとハシボソガラスでも生活環境や行動様式に微妙な違いがあること、鳴き声も違うということ等々…がわかってきます。それがわかると、街なかで見かけると、「ああこいつはブト(ハシブトガラス)だからちょっと都会的だな」とか、「こいつはボソ(ハシボソガラス)だけにやっぱり臆病だな」などと勝手な想像を働かせることが出来るようになります。

 

「人間については書かれすぎた」――人間の「ために」生活していない彼らを観ることで、世界はもっと愉しい。

 

2017年2月。大きな公園で観たツグミ。こんな普通の鳥でも名前は知っていても、姿かたちを全然知らなかったんだな、と改めて思いました。

 

少し話が飛びますが、私の好きな小説家の保坂和志さんの作品には、いつも猫が登場します。しかし保坂作品の猫は、人間の物語に奉仕する道具立てとして登場することはありません。猫は猫として描かれます。いつも言われていることなので、出典がどことすぐ出せませんが(また調べてみます)、「人間については書かれすぎた、もっと小説に、猫を猫として書きたい。」というような趣旨のことを、保坂さんはしばしば発言し、書かれています。

 

人間として暮らしていて、傍らにいる鳥たちの世界を眺める愉しみも、そういうところにあると思います。人間の周囲にいる鳥たちは、人間の営みを利用して生活する鳥もたくさんいますが、しかし彼らは、私たちの「ために」生活しているのではありません。彼らとして生きている。それを眺めてみると、退屈だったり辛かったりする日常が、少し色づいて思えるのです。

 

 

バードウォッチングの愉しみ方。「知れば知るほど面白い」。

 

野鳥観察の代名詞、カワセミを初めて観れたときは嬉しかったです。

 

さて、例えば鉄道にも「撮り鉄」とか「乗り鉄」とか色々愉しみ方があるように、バードウォッチングの世界にも様々なやり方があります。珍しい鳥=希少種を探したり、色々な場所に出かけて行って今までに観た鳥の種類=ライフリストを増やしたり、高性能のカメラを駆使して美麗な野鳥写真を撮影したり。私たち親子の方法は、観た鳥の写真を撮って自分たちの「鳥図鑑」を作ること。ライフリストに似ていますが、写真に撮る鳥のなかには今までに観た鳥や、知っている鳥もいます。写真をスケッチブックに貼って、撮影した場所と日付とともに、市販の図鑑から説明文を書き写していると、自然とその鳥のことを覚えていって、自分たちの「知っている鳥」の数が増えてくるのですが、「ああ、こうやってハマっていくんだな」を実感しつつ、愉しんでいます。

 

初心者Birderのカバンの中身、紹介します。特別なモノは実は、何も要りません。

 

バードウォッチングというと、大きな双眼鏡や望遠鏡、超望遠の馬鹿でかい一眼レフみたいなものを想像しがちですが、私たちは特別な道具や、高価な機材はひとつも使っていません。いずれはそんなものが欲しくなるのかも知れませんが、究極的には肉眼でも、極端に言えば眼の前を横切った鳥を観るだけで、成り立ってしまう手軽な<遊び>です。今回はそんな初心者Birderの私たちのカバンの中身を紹介してみます。

 

双眼鏡(低価格でも構わない、コンパクトで取り回しのいいものを) 

まずは観ること、というわけで双眼鏡なのですが、これ、ホームセンターで売っているような一番安価なものの一つです。1,000〜2,000円くらい。バードウォッチングの入門書などを見ると、同じ日本の光学機器メーカーとして定評のあるKenkoの双眼鏡でも、だいたい2万円くらいものを最低限の「初級機」として取り上げていて、もちろんいいものは価格差なりに鮮明さ、「見え味」が違います。しかしこれは自然観察教室の指導員の方にご教示頂いたのですが、小さくて軽くて取り回しのいいものが、子どもにも使いやすいし、気軽に使えるので、意外といいんだよ、ということ。息子はいつもこれを持ち歩いています。

 

単眼鏡(双眼鏡は意外と観るのにコツがいるので、より手軽でオススメです) 

双眼鏡はバードウォッチングの必須アイテムと言えますが、意外と両眼の視野を合わせたり、使い回しにコツがいるもの。両眼で観ることで立体感をもって対象を観ることができて、いい双眼鏡で実際に観てみると、なぜバードウォッチャーが双眼鏡を必携しているのかがわかりますが、私はいつもより手軽な単眼鏡を持っていきます。これも、Kenkoの一番安いの。ベテランのBirderからみれば邪道なのかもしれませんが、これひとつポケットに入れておくだけで、気軽に望遠できるので、個人的にオススメです。双眼鏡とともに、まずは8〜10倍くらいまでの低倍率で観る、というのが、これは初心者の、ではなくて、バードウォッチングの定番です。

 

カメラ(高倍率のコンデジが取り回しやすく、手持ちでも失敗が少ない)

カメラはもちろんピンキリなのですが、私達のように「とりあえず観た鳥を確実にカメラに収める」ということを考えると、高倍率のコンデジが一番取り回しやすく、失敗がありません。私のはこの2世代くらい前のSX410ISという機種なのですが、画質はやはりそれなりですが、光学40倍超のズームは、手持ちで鳥を押さえるには必要十分です。私は手ブレを押さえるため、「2秒」のセルフタイマーをよく使います(どんな機種でもだいたいあると思います)。

 

予算的に少し上げて5万くらいまで出せるなら、このあたりがオススメ。野鳥撮影にも定評のある、より高画質、高倍率の機種です。私も欲しい。

 

私がカメラに使っているのがこのチャムスのストラップ。取り外しが出来るところがいいです。チャムスのペンギンみたいな鳥のトレードマークは、実は「カツオドリ」という海鳥。Birderにオススメ?

 

図鑑(国内で観られる鳥は約600種。これがほぼ一冊の図鑑で足りる絶妙な数なのです)

 というわけで昆虫や植物などと違い、それくらいの数ですから、日本で観られるほぼ全種を網羅したバードウォッチャー必携とされる定番の図鑑でも、4,000円程度で入手できます。と言いながら、私たちはまだそういうものを持っていなくて、小学生の学習用図鑑と、文庫で手に入る手軽な図鑑、そのKindle版などを普段持ち歩いています。なかでもKindle版の『くらべてわかる野鳥 文庫版』(山と渓谷社)はスマホで見られるので重宝しています。

 

(※などと言っていると、先日クリスマスで長男の許に、日本野鳥の会の定番図鑑、『フィールドガイド日本の野鳥』(下記)がやってきました。これか、文一総合出版の『フィールド図鑑 日本の野鳥』あたりがド定番とされています。)

 

野鳥観察の大定番。日本野鳥の会の発行。関連のグッズとして、本図鑑に対応した『CD鳴き声ガイド 日本の野鳥 6枚組』も発売されています。「聴き分け」に憧れているので、いつか欲しいな、と思っています。

 

Kindle版図鑑をひとつ持っておくと、スマホで持ち歩けるので便利です。

 

数取器(紅白のアレ!…といって今は伝わらないのかな?) 

これはなかばネタなのですが、『紅白歌合戦』とかで日本野鳥の会の人が人数を数えてたアレですね。息子が欲しがって、その日観た鳥を数えるというので。群れを数えたりすると愉しいというか、そうした実用のもの(「いつ」「どこで」「なにを」「いくつ」観たか、というのが野鳥観察では重要です)だと思うのですが、私にとっては、実用というより、カチ、カチという感触や、文字盤の回るヴィジュアル、シンプルな構造やスチールの質感など、道具としての格好良さに、個人的には惹かれているアイテムで、息子との野鳥観察の際は無駄にも思えながら、持ち出すと気分がアガります。

 

その他・スマートフォンなど

近所で見つけた、というよりふらっとやって来たジョウビタキをスマホで。「田舎だからだろ?」と言われそうですが。(Huawei P10 Liteで撮影)


カメラを忘れたときや、野鳥観察のつもりじゃない外出のときなどにも、ふいに観たことのない鳥に出くわすこともあります。そのときはとにかくスマホでも何でも証拠を押さえておくと、あとで図鑑を参照して、撮ったことのなかったものだったりすることもあります。

 

【まとめ】手軽なところから始めて、そのまま愉しむことも、より深めていくこともできる<遊び>と<探求>として。

 

私の住む海辺の街ではよく見かける、鮮やかなブルーとレンガ色のイソヒヨドリ。私たち親子が野鳥観察にハマったきっかけの鳥でもあります。


――というわけで、本当に特別なモノは何も持たなくても、バードウォッチングを愉しめることが伝われば幸いです。実は先日息子の誕生日で、息子の欲しがったフィールドスコープという、野鳥観察に適した望遠鏡を購入して、今色々弄っているところ(いずれレビューしてみたいと思います)だったりして、早速「特別なモノは要らない」という言葉に反しているのですが、手軽なところから始めて、そのまま愉しむことも、より深めていくこともできる<遊び>と<探求>として、これからも愉しんでいきたいと思います。これを読まれた方がひとりでも、興味を持っていただけたら幸いです。

 

 【過去記事より、野鳥観察記録】

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【オススメ入門書】

実用的かつ愛溢れる語り口も魅力的な、素晴らしいバードウォッチング入門書。