ソトブログ

文化系バーダー・ブログ。映画と本、野鳥/自然観察。時々ガジェット。

ソトブログ

歩く愉しみ。ウォーキング・イン・ザ・リズム奇絶峡。

 

この記事をシェアする

 

歩くスピード落としていくつかの願いを信じて
冷たいこの道の上を 歌うように 歌うように歩きたい

 

フィッシュマンズ「WALKING IN THE RHYTHM」(作詞:佐藤伸治)より 

 

自然観察教室「秋の奇絶峡(きぜつきょう)を楽しもう」

 

先日(2017年11月12日)、いつものように小学生の長男と二人、私たちの街<和歌山県田辺市>にある「ひき岩群ふるさと自然公園センター」主催で定期的に開催されている、自然観察教室に参加してきました。今回のテーマは、「秋の奇絶峡を楽しもう」奇絶峡については、当ブログでも以前紹介しました。

 

 
上記の記事にも書いたとおり、奇絶峡というところは、両側の山から転げ降りたといわれる巨石のごろごろと並んだ、迫力のある渓流が雄壮で美しい景勝地です。

 

奇絶峡(Google マップ) 

 

その川べりに降りて、水遊びをするのがこの街の夏の風物詩ですが、今は11月。この季節では紅葉が見どころで、週末には観光バスも立ち寄ってきます。とはいえ「自然観察教室」ですから、どういう感じの行程になるのかな、と思っていると、川に降りるのではなく、集合場所の奇絶峡の駐車場から川沿いの歩道を2キロほど伝って「奇絶峡トンネル」の手前の脇道に入り、まわりの風景や植物、生き物たちに触れ合いながら歩いていこう、ということでした。

 

「奇絶峡トンネル」の脇の道はこんなところ(ストリートビュー)

 

“ぼくらは歩く ただそんだけ”

 

そう、ただ「歩くだけ」。しかし、私たち(私と息子)は内心で小躍りしました。いや、息子には訊いていませんが、息子の足取りを見ていればわかります。ふるさと自然公園センターの自然観察教室で、一番面白いのが、先生たちや参加者と一緒に歩くことなのです。当たり前の話ですが、自然のなかを歩いていると、目の前の山にも足元の土にもありとあらゆる生物相・植物相が広がっていますが、そのほとんどを私たち素人は知りません。いや、いつだって見たことはあるのですが、例えば生い茂った竹林、山林のシダの群生を見て、それが何という竹で、何というシダで、なんて知らない。みな同じように見えたシダが、実は見えているその場所だけで何種類も何十種類もあったり、そんなことはわからない。

 

それを立板に水のようにスラスラ、さらさらと教えてくれるその道のプロの先生たちと一緒に歩くことができるウォーク・イン・ネイチャー。その愉しさに、初めは子どもと一緒でなければ参加することはなかったであろう私も、「子どもと一緒でなければ参加することはなかった」ということを恥じるくらいの気持ちに今はなるほど、ハマっています。

 

こういうものは文章で紹介されたものを読むより、体験する方が愉しいに違いないので、どういう切り口で書くかたいへんに迷ったのですが、先日ラジオを聴いていると、TBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』の“秋の推薦図書特集”(2017年11月18日放送)で、レベッカ・ソルニット『ウォークス 歩くことの精神史』という本が紹介されていました。

 

ウォークス 歩くことの精神史

ウォークス 歩くことの精神史

 

 

本書は、「二足歩行と都市計画、ルームランナーと迷宮、ウォーキングクラブと風俗史、思考と文化と歩行の深い結びつきを証した驚くべき冒険の書。歩くことがもたらしたものを語った歴史的傑作。」という帯文を見るだけでワクワクするような、歩くことが人間にもたらしたものを考察した本ですが、これを番組で紹介されていた伊藤聡(@campintheair)さんは、オープンワールドゲームの『Fallout 4』も、ジェイムズ・ジョイスの『ユリシーズ』も、『ブラタモリ』も、「歩き回っているだけで愉しい」っていうことを教えてくれるという意味で同じだ、という趣旨のことをおっしゃっていて、私はそれを聴いて奇絶峡を歩いた愉しさを思い出していました。

 

私は『ウォークス 歩くことの精神史』は未読なので、近いうちに買って読むつもりですが、今日は、今回私たちが歩いていて見つけたり、教えていただいたりしたものをいくつか写真とともに紹介してみることにします。

 

ウォーキング・イン・ザ・リズム奇絶峡。

 

――おそらく同じ奇絶峡を歩いても、ここに似たような他の場所を歩いても、人によって時間によって季節によって、見えるものは違うでしょう。そう思うと何度でも歩いてみたくなります。

 

このような巨石がゴロゴロしています。 右端の窪みは「大人(おおびと)の足跡」。

 

奇絶峡の名物、「不動の滝」。 

 

……の下には、何か魚がいないかな、と思いましたが見つかりませんでした。

 

見上げると、ところどころ、巨石が道路に落ちないようにロープで括ってあるのが見えます。こういうのが落ちてできた景観ということか。

 

足許にはフユノハナワラビ(リンクはWikipedia「ハナワラビ属」)。ワラビと同じシダ植物。これも食べられるそうです。

 

フユイチゴを採って食べる子どもたち。“フユイチゴ・フリーク”な息子は、「まだちょっと酸っぱかった」とのこと。

 

通称「猫じゃらし」ことエノコログサ。穂の短いこれは「ハマエノコロ」だそう。

 

 こちらも山菜としても美味しい、イタドリ(通称ゴンパチ)の枯れた枝を折った笛を吹きながら歩く。ウォーキングインザリズム!

 

成長して満開の果実をつけたイタドリ。

 

こんなものも。シロハラと思しき鳥の死骸(をつつく子どもたち)。

 

向こう岸の斜面林では色々な鳥が鳴いていましたが、この時期は、松茸狩などを目的とした入山権が入札されており、対岸への吊橋は渡れませんでした。

 

寒空の下で咲くノコンギクも綺麗でした。 

 

【今回のBGM】

宇宙 日本 世田谷

宇宙 日本 世田谷

 
宇宙 日本 世田谷

宇宙 日本 世田谷

 

 「WALKING IN THE RHYTHM」所収。1997年に、このアルバムのアナログ盤をリアルタイムで聴いたのが、私のこの世で最も好きなバンド、フィッシュマンズとの出合いでした。 「WALKING IN THE RHYTHM」にはシングル盤もありますが、打ち込みトラックのシングルよりも、生ドラムのアルバムヴァージョンの方が、今回のテーマに合うような気がします。

 

 【2017年、これまでの自然観察教室から】