【レビュー】「実はストロング・スタイル」なポメラDM200で、ただ無心に書く。――あるいはポメラDM200へのラブレター。
【2022.8.19追記】ポメラDM200の待望の後継機種、ポメラDM250が2022.7.29に発売されました。DM200ユーザーとして、最新フラッグシップ、DM250のリリースを言祝ぎつつ、あらためてポメラについて思いを巡らせてみました(下記記事)。
“Pomera, My Love, to Every Hour in Every Day”――ポメラDM200ユーザーが、DM250誕生を言祝ぐ。 - ソトブログ
「ユーザーが手に取ったときが、彼/彼女にとってのブランニュー・プロダクト」
書いては消し、書いては消し。
ただただ「欲しい」「使いたい」という片思いのような上記の文章を書いてから一ヶ月後の昨年末に、ポメラDM200を買ってさらに約1ヶ月。発売から1年以上経っていようと、私が働いていた20年前のヴィレッジ・ヴァンガード(勿論、ニューヨークのジャズクラブではなくて、日本の“遊べる本屋”の方)の社是に倣うなら、「ユーザーが手に取ったときが、彼/彼女にとってのブランニュー・プロダクト」。であって、
今はわからない
他の人にはわからない――荒井由実・作詞「ひこうき雲」
――他の人のことはわからないけれど、私にとっては初めてのDM200、あるいは初代DM10いらいひさしぶりのポメラ。その魅力をどうにか(通り一遍の、「役に立つ」レビューではなく)、極めてパーソナルな、私から貴方へのギフトのように、書きたい書きたい書きたい!と思いながら筆が、タイピングする手が指が、私の足りない頭が――思うに任せず、書いては消し、書いては消ししているうちに1ヶ月が過ぎてしまいました。
指が、心が躍り、歌うようです(いやいや、比喩ではなく)。
ポメラDM200のキーピッチは17mm。若干狭めではありますが、癖のないキー配置と、「キーの隅を押してもぐらつきの少ない」と謳う「V字ギアリング構造」という剛性の高いキー構造のおかげか、キータッチは極めて快適。
まだ相見えぬ貴方に包み隠さずお伝えするならば、私はまだ、この、ポメラとしては(破格に)多機能なテキスト・エディタ端末の様々な機能の何一つ、何もかも、使いこなせてはいません。
ただもう当たり前の、人に読まれるべき有益なレビューは(いったん)諦めて、こうして、キーボードを叩いて文章を書いているのみ。
しかしそうしてみると、私の心がにわかに躍るのがわかります。この指と、その指先から直結した思考というより脳という臓器も含めた物理的な私のからだぜんたいが、ダンスをするのがわかります。それも四つ打ちのダンスビートではなくて、いくらか後ろがかりのレイドバックした、ブレイクビーツやワンドロップ。それがポメラDM200のキーボードの下に隠された、「V字ギアリング構造」という、モータースポーツ用語のようなキー構造のせいなのかはわかりません。しかしやはり、指が、心が躍り、歌うようです(比喩ではなく)。
『2001年宇宙の旅』のようなストロング・スタイル。
7インチの必要十分なディスプレイ、美しいモリサワのアウトラインフォント、心地よいキーボードという三拍子揃った入力環境で、「ただただ書く」ことでひさしぶりに、「書くことじたいの快感」を得られました。
実はポメラDM200という、「最強のテキスト入力マシーン」あるいは「ポケット・メモ・ライター」というポメラのDNAを確実に受け継いだこの鈍く黒光りする(※実際には、艶消しの控えめな黒)マシンは、そういってよければ余計な、デカダンな、デコラティブな、そしてコンビニエントな機能は使わずに、「ただただ書く」という、その使い手の筆力のみを試す/試されるような、ストロング・スタイルの使い方がいちばん似合うのはないか、という気がしています。
鈴木卓爾監督が映画『私は猫ストーカー』で、原作エッセイから抽出した説明ナレーションを脚本から削ぎ落としたように――この比喩じたいがストロング・スタイル過ぎるならば、名匠スタンリー・キューブリックが『2001年宇宙の旅』の明快なストーリーを叙述するナレーションをすべてカットしたように。
“ニコニコ現金払い”のように、ただただ当たり前にSDカードを使う。
今更、今どき、と侮ることなかれ。(標準サイズの)SDカードの、意外なほどの安心感と、使い勝手の良さを再認識しました。私の環境の場合、メインの執筆端末であるASUSのChromebook、C202SAが同じく、標準サイズSDカードスロット搭載なのも大きい。
そしてこの剣やGunよりも強い、黒い活字入力機械で作成した文章は、あたかも“ニコニコ現金払い”しか信用しない特殊な商慣習を持つ特殊な業界の特殊な人々のように、――あえて今回ポメラに初めて搭載されたスマートなWi-Fiや、前作から引き続きのこちらも一周廻って北東アジアではスマートな決済方法にも使われているQRコードによるデータ受け渡しでもなく――物理的な記録媒体として唯一搭載を許されたSDカード、それも質実剛健な、標準サイズのSDカードにデータをぶち込み、もとい保存して――、あくまで無言で、ディスプレイを閉じて(ポメラDM200はディスプレイを閉じるだけで電源が落ち、ディスプレイを開くだけで電源が入る)何も考えずSDカードを抜き――、それをそのまま(私の場合)、愛機ASUS Chromebook C202SAのSDカードスロットに差し込むだけでよいのです。
もちろんこの文章もそうして書かれています。
Hey, Pomera. OK, DM200. ねぇ、ポメラ。
開けば電源オン、閉じれば電源オフという、ほぼ「無心」で作業できる心地よさ。ディスプレイを開いてから、画面が点く(そのまま編集画面が開く)まで、実測で4秒強でした。
あえてここで蛇足的なエクスキューズを書くと、別にそうすべきだ、と言っているわけではありません。このような陶酔的な駄文ではなく、もう少しまともなレビューももう一度、あるいはそれ以上、書くつもりです。私はそれくらい、このポメラDM200が好きになりました。
Hey, Pomera. OK, DM200. ねぇ、ポメラ。
これからも、よろしく。