左利きの左利きによる左利きのためのボールペン選び。【前編】feat.“冷たい雨に撃て、約束の銃弾を”
一幕目「左利きにとっての筆記。その苦難の歴史」
両手で書いた黒板の話。
私自身左利きで、様々な道具が右利き用に作られていることから不便に思うことがいくつかあって(あるいは、「不便」であることにさえ気づいていないことも多い)、大学の卒業論文は「社会における左利き」というようなテーマで書いた憶えがあります。そのなかでも筆記は私自身結構長年、悩まされてきたことのひとつ。
私は小学校のとき、書道(毛筆)を習っていたのですが、書道は当然、右手で行います。(実は左手用の書道教本、というのも開発されているのですが、かなり特殊な筆記法であって、私自身は小学生の頃は知りませんでした)
そのため、私は普段鉛筆で字を書くのは左、書道の時は右、と使い分けていたのですが、あるとき、授業参観で黒板に字を書くことになり、左手にチョークを持って書き始めた私はうまく書けないことに気づき(チョークが左から右に走らない)、右手に持ち替えて書き、教室がざわついたそうです。私自身は覚えていなくて、父から聞いた話ですが。
左利きの筆記の典型「押し書き」。
チョークで字がうまく書けなかったのは、左利きの筆記の典型のひとつ、「押し書き」に理由がありそうです。
右手に筆記具を持ち、右手で字を書く場合、筆記具を右に傾けて、左から右に筆記具を「引く」動作が多くなります。反対に左手で筆記する場合、筆記具を右利きと同じように持つと左に傾ける格好になり、そのまま左から右に筆記具を動かすと、右手の場合と逆に「押す」動作になります。
【右手】
/ → → →
【左手】
\ → → →
黒板においては筆圧で黒板とのあいだでチョークの先端が引っかかり、うまく前に進まなかったというわけです。
私の場合(冷たい雨に撃て、約束の銃弾を)
これは紙の上でも同じで、私の場合、引っかかりを減らそうと書いているうちに、自然にかなり右上がりの字体で書くようになっていました。水平に左→右に動かすより、斜め上に書くことによって圧力を逃がしていたのだと思います。しかも、本来「とめ」の部分を「はらう」感じにすることによって、筆圧がかからないように書いています。これは意識してそうしているというより、「自然とこうなってしまった」という感じです。
ただこの文字、私自身は読めるのですが、読みにくい方がかなりいらっしゃっるので(妻にもよく言われます)、社会人になってから、かなり強引にもう一パターン書体を開発しました。それがこちら。
こちらは少しペンを立て気味にして書いています。こちらが読みやすいかどうかは疑問ではありますが。
私だけでなく、左利きの人の典型的な筆記スタイル(ペンの持ち方、走らせ方など)にはいくつかのパターンがあるようで、皆、なんとか自分なりの書きやすい書き方を工夫しているようです。
左利きはボールペンが書けない!
さて、ここからやっと本題のボールペンについて。
90年代くらい、ちょうど私が中・高校生の頃に、水性ボールペン(ゲルインク)が流行し始めて、みんなこぞって使っていたのですが、私には当時の水性ボールペンはことごとくダメで、一見、なめらかに書けそうなのですが、すぐにかすれてインクが出なくなります。なので最近までずっと、ボールペンは油性以外使っていなかったのですが、油性ボールペンは書き味のなめらかさに欠けるため、筆圧の低い私にはやはり書きにくい筆記具である時代が長く続きました。
ところが近年、文房具の進化はすごくて、三菱鉛筆「ジェットストリーム」以降でしょうか、なめらかな書き味の油性ボールペンや、左利きでもかすれにくい水性ボールペンが増えてきました。
――と、ここまでが、映画でいう一幕目。というか、たんに左利きの私にとって使いやすくて、ルックスや書き味も気に入っているボールペンを紹介したかっただけなのですが、前置きが長くなってしまいました。具体的な紹介は次回、後編で。(アイキャッチ画像でネタバレしていますが。)
※後編更新しました。(10/17)
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ド定番、エポックメイキング。私も今は使っていませんが、大変お世話になりました。