ソトブログ

映画と本、自然観察(あるいは30代後半、2児の父の日常)

夏の映画、洋画編「うだるような暑さのなか――。」

 

はてなブログの、今週の『特別お題』が夏の作品、(映画・ドラマ・アニメ)、ということで、乗っかって色々考えてみたのですが、今日は1本の洋画について。

 

狼たちの午後 [DVD]

狼たちの午後 [DVD]

 

 狼たちの午後
原題:Dog Day Afternoon
製作年:1975年
監督:シドニー・ルメット
あらすじ:
ニューヨーク、猛暑の白昼。銀行に3人組の強盗が押し入る。しかしそのうちのひとりは逃亡。その上、銀行には小額の現金しかなかったことがわかる。犯人のソニーとサルはあっという間に警官隊に包囲され、人質とともに篭城せざるをえなくなる。一方、集まった野次馬たちは犯人を応援するという異常な事態に。そんな中、ソニーが犯行に走った理由も明らかになるが。はたして事件の行方は?

(「映画.com」より 狼たちの午後 : 作品情報 - 映画.com )

 

狼たちの午後』原題は、"Dog Day Afternoon"


原題の“Dog Day”(ないしDog Days)は「盛夏」を意味するイディオム。直訳すると『Dog Day Afternoon』=『真夏の午後』ということになります。

 

本作は1972年8月22日、真夏のニューヨークのブルックリンで実際に起きた事件を題材にしています。
行員たちを人質に銀行に立て籠もる犯人二人と人質たちは、空調の止まった銀行の建物内で、包囲する警官隊は炎天下で、じりじりとした睨み合いが続きます。
ここにいる全ての者に平等に降り注ぐ灼熱の太陽こそが、この映画にリアリティを与えています。

 

強盗の主犯格・ソニーに扮し、「鬼気迫る」を地で行く演技を見せるアル・パチーノ。犯行開始時、映画冒頭でジャケットにネクタイという出で立ちの彼は、思うように事が進まない焦りも相俟って、日が沈む頃には首元は汗でドロドロ、シャツの前をはだけています。

 

しかしこの映画、実は撮影時は秋頃で、吐く息が白くならないように、口の中に氷を含んで演技をしたんだそう。まさかそうだとは思えないほど、ソニーだけでなく、糖尿病で体調を崩しながらも行員たちの前で冷静さを失わない支店長をはじめ、キャストたちの“暑さによる消耗”の演技の、迫真性は見事としかいいようがない。

 

冷静さを失いかねない状況の只中で。

 

そしてこの映画の緊張感を持続させているのは、何といってもアル・パチーノの存在感でしょう。
その演技もさることながら、ソニーという人物の造形も素晴らしい。ソニーはプロフェッショナルではないし、冷静沈着ともいえないが、決してバカではないということ。少なくとも、刻一刻と変化し、冷静さを失いかねない置かれた状況のなかで、安全圏にいる私たち観客と同等かそれ以上の判断力で、ベストな対処をしようと試みている。
だからこそハラハラする。
それこそがこのドラマの本質だと思います。
肌にまとわりつくような暑さを画面から感じつつ、そして手に汗を握りつつ、クライマックスの展開に身も凍るような戦慄が走ります。

 

現実の滑稽さを担保したリアリティの質。

 

ここで裏腹なことを言うようですが、この映画も含めて、この頃の映画には、持続するサスペンスの傍ら、とぼけたユーモアの味わいもあって、ソニーの相棒、サルのちょっとエキセントリックなキャラクターや、人質の女性行員たちの、束の間のガールズトーク。あるいは早口でまくし立てるソニーの奥さん!など、コミカルで魅力的な脇役たちのシークエンスが、映画を間延びさせることなく挟み込まれていて、70年代の映画の、今とはたぶん少し異なる、リアリティの質を感じました(そしてそれはとても、魅力的です)。

 

うだるような暑さを感じさせる映画を更にもう少し。

 

実は他にもいくつか思い浮かぶものがあったのですが、それらの共通点が、今回の表題、


「うだるような暑さのなか――。」
です。


一本はこれ、

フォーリング・ダウン [DVD]

フォーリング・ダウン [DVD]

 

フォーリング・ダウン
原題:Falling Down
製作年:1993年
監督:ジョエル・シュマッカー
作品紹介:
ロサンゼルスを舞台に、日常生活に疲れた平凡な男が理性を失い、数々の事件を起こしていく姿を描くサスペンス・スリラー。

(「映画.com」より フォーリング・ダウン : 作品情報 - 映画.com )

 

こちらは暑さのあまりキレてしまう、一見まともそうな風貌のサラリーマン、Dフェンス(マイケル・ダグラス)。猛暑のなかの大渋滞。車のエアコンも効かず、一向に進まない車列に業を煮やしていきなり車を乗り捨てる冒頭から、「こいつヤバイな」という雰囲気を醸し出しているのですが、どんどんエスカレートしていく様が、狂気じみているのに、これもまたユーモラス。

しかも、意外にもDフェンスは間違ったことを言ってないんじゃないか、「もっとやっちゃえよ」というような、自分の心の声も聞こえてきそうになる、夏の暑さにやられそうになった頭を更に混乱させる怪作です。


さらにもう一本。 

ザ・サンド [DVD]

ザ・サンド [DVD]

 

ザ・サン
原題:The Sand
製作年:2015年
監督:アイザック・ガバエフ

 

リゾートビーチでスプリング・ブレイク(春休み)の乱痴気騒ぎをしていた高校生たちが、一夜明けてみると、「人食い砂浜」に一人、またひとりと餌食にされていく、というような、所謂B級ホラーの体裁。

それが、生き残った数名の仲間たちと、移動手段のない砂浜という、炎天下でありながら閉鎖的な空間。というまさに発明のような演劇的空間で、しかもその数名たちの、恋の鞘当てを含む微妙な心理サスペンス&ラブストーリーになっているという、アクロバティックな良作。

映画監督・脚本家の三宅隆太さんの連載、および単行本の紹介で知り、観ることができました。

43mono.com

 

 

次回は邦画編(の予定)です。

※追記:下記、「続・洋画編」「邦画編」も書きました。

 

sotoblog.hatenablog.com

 洋画編、その2

 

sotoblog.hatenablog.com

 邦画編はこちら