ソトブログ

映画と本、自然観察(あるいは30代後半、2児の父の日常)

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映画

映画レビュー『マイノリティ・リポート』――あらゆる要素をまとめ上げるスピルバーグの“過剰さ”。

マイノリティ・リポート原題:Mirority Report製作年:2002年監督:スティーヴン・スピルバーグあらすじ:2054年のワシントン。プリコグと呼ばれる予知能力者が未来の殺人を予知、犯罪予防局が未然に逮捕することで犯罪が90%減少していた。犯罪予防局のアン…

映画レビュー『ベイビー・ドライバー』――独りでいた時間が、彼を育てた。

ベイビー・ドライバー原題:Baby Driver製作年:2017年監督:エドガー・ライトストーリー:天才的なドラインビングテクニックで犯罪者の逃走を手助けする「逃がし屋」をしているベイビーは、子どもの頃の事故の後遺症で耳鳴りに悩まされているが、音楽によっ…

映画レビュー『上海の伯爵夫人』――カズオ・イシグロ脚本で描く、世界史よりも広大な個人の内的世界とは?

上海の伯爵夫人原題:The White Countess 製作年:2005年監督:ジェームズ・アイヴォリーあらすじ:1930年代の上海。ロシア貴族のソフィアは、祖国を逃れて上海で暮らしている。夫はすでになく、夫の側の親族と暮らしていた。ソフィアはクラブでホステス(タ…

【書評】『ダンケルク』をきっかけに再読したい、物語を超越した「戦争小説」7選。

今週のお題「読書の秋」 写真は、映画『真夜中の戦場/クリスマスを贈ります』(原題:A Midnight Clear、1992年)より。 映画『ダンケルク』に物語がない、というのは実はウソというか、雑な言い方で、端的な語り口の問題だと思います。しかしながら、戦争…

映画レビュー『カイロ・タイム 異邦人』――アメリカの"YOU"ことパトリシア・クラークソンが魅せる、大人の関係。

カイロ・タイム 異邦人Cairo Time製作年:2009年監督:ルバ・ナッダあらすじ:女性誌の編集者、ジュリエット。彼女はパレスチナのガザ地区で働く国連職員の夫と休暇を過ごすため、エジプトの首都、カイロを訪れる。ところが夫はトラブルで到着が遅れることに…

映画レビュー『スウィート17モンスター』――“あの頃に戻りたい”なんて思わせない。青春映画の正しいあり方。

スウィート17モンスター原題:The Edge Of Seventeen製作年:2016年監督:ケリー・フレモン・クレイグあらすじ:17歳の高校生、ネイディーンは妄想癖と自己嫌悪感で空回り気味のスクールライフを送っている。唯一の親友、クリスタが、イケメン・勝ち組で自身…

“スウィート7(なな)モンスター”

“トイケン”/少年時代は覚えていない/父親はクルマのなかで歌をうたう 自分の子どものことだからといってこういうところに何でも書いてしまうのは、子どもに対してフェアじゃないような気もして少し気が引けるので詳細には書かないけれど、先日の日曜日は運…

映画レビュー『ダンケルク』――物語らない、あるいはノーランと田中小実昌。船底の穴と寝台の穴。

ダンケルク原題:Dunkirk製作年:2017年監督:クリストファー・ノーラン wwws.warnerbros.co.jp クリストファー・ノーラン監督の新作『ダンケルク』を観て、ダンケルク海岸で死んだ兵士も、生きて帰った者も、この映画によって、「今もあの時間のなかで生き…

祖母と“第三の新人”たち、祖父とビルマ戦線――小島信夫から『ダンケルク』まで。

今週のお題「私のおじいちゃん、おばあちゃん」 先日私は自身で書いた祖母の告別式での挨拶を引用し、祖母の思い出について書きました。そこで私は、祖母と同世代の作家たちが晩年に書いた小説について触れています。 sotoblog.hatenablog.com わたしはおば…

映画レビュー『ズートピア』――過ちを認めうること/"Try, Try, Try"

ズートピア原題:Zootopia製作年:2016年監督:リッチ・ムーア、バイロン・ハワード あらすじ:どんな動物も快適な暮らしができる環境が整えられた世界。各々の動物たちには決められた役割があり、農場でニンジン作りに従事するのがウサギの務めだったが、ウ…

ホラー嫌いのためのホラー映画選「“ブルー・マンデー”だけは投げないで!」

私自身、元来「ホラーというだけで観ない(恐いから)」というホラー映画(食わず)嫌いだったのですが、映画を日常的に観るようになってくると、「どうも映画好きの人ほどホラー映画が好きらしく、ホラー映画には映画本来の魅力の本質が詰まっているらしい…

映画レビュー『わたしは、ダニエル・ブレイク』――悪夢的不条理に立ち向かう、私たちの“スーパーヒーロー”。

わたしは、ダニエル・ブレイク 原題:I, Daniel Blake 製作年:2016年 監督:ケン・ローチ あらすじ: イギリス北東部ニューカッスルで大工として働くダニエル・ブレイク。心臓に病を患ったダニエルは、医者から仕事を止められ、国からの援助を受けようとし…

映画レビュー『キツツキと雨』――歓びが生まれる瞬間を何度でも。

キツツキと雨製作年:2012年監督:沖田修一あらすじ:とあるのどかな山村に、ある日突然、ゾンビ映画の撮影隊がやってくる。ひょんなことから撮影を手伝うことになった60歳の木こりの克彦と、その気弱さゆえにスタッフをまとめられず狼狽する25歳の新人監督…

映画レビュー『ストレイト・ストーリー』――おもいどおりにうごかない(またはデヴィッド・リンチはいつだって私たちの隣人)。

ストレイト・ストーリー原題:The Straight Story製作年:1999年監督:デヴィッド・リンチあらすじ:アメリカ・アイオワ州に住む73歳のアルヴィン・ストレイトは、娘のローズと二人暮らし。ある日、10年来仲違いしていた76歳の兄ライルが心臓発作で倒れたと…

洋画サントラ10選、楽曲リンク集【2010年以降編】その2

Teenage Fanclub(映画『ヤング≒アダルト』に楽曲提供) sotoblog.hatenablog.com 上記記事の楽曲リンク集、その2です。『キャロル』以下の5作品。 …余談ですが、今回取り上げたサントラ、リンクした楽曲はポップソングの体裁をとったものが多いですが、サン…

洋画サントラ10選、楽曲リンク集【2010年以降編】その1

『はじまりのうた』Begin Again sotoblog.hatenablog.com 上記記事で紹介したサウンドトラックの楽曲への、各アルバム1曲ずつのリンク集(YouTube)です。記事ではちょっと無粋かな、と楽曲へのリンクは貼らなかったのですが、聴かれなかったら意味がないか…

洋画サウンドトラック10選―デヴィッド・ボウイ"Modern Love"にのせて彼女は走る。【2010年以降編】

『フランシス・ハ』Frances Ha ここ最近、とくに『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のヒット以降、映画のサウンドトラックがまた面白くなっています。また、『シング・ストリート 未来へのうた』など音楽そのものがテーマになった映画の場合、劇中の人…

映画レビュー『ことの終わり』――“神”というオールマイティカード。

ことの終わり原題:The End of the Affair製作年:1999年監督:ニール・ジョーダン原作:グレアム・グリーン『情事の終り』(Graham Greene "The End of the Affair")あらすじ:1946年、ロンドン。小説家のモーリス・ベンドリックス(レイフ・ファインズ)…

夏の映画、邦画編「他の誰でもない、私(だけ)の記憶。」

夏の映画、邦画編を選んでいたら、90年代の作品ばかりになってしまったのには、理由がないわけではありません。90年代に10代だった私にとって、夏の映画は青春映画であって、「私だけの映画」でした。大衆娯楽である映画作品を「私だけのもの」と思えるのは…

夏の映画、続・洋画編「トホホな人生にも、等しく夏は来る。」

夏の映画!というとサマーでヴァケイションなハイテンションもしくは甘酸っぱいお話を想像、期待するけれど、映画人というのは、あるいは映画ファンの観客もまた、業の深い人種なのでしょうか。私の思い入れのある夏映画はどれも、イケてない人のイケてない…

夏の映画、洋画編「うだるような暑さのなか――。」

はてなブログの、今週の『特別お題』が夏の作品、(映画・ドラマ・アニメ)、ということで、乗っかって色々考えてみたのですが、今日は1本の洋画について。 狼たちの午後 [DVD] 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ 発売日: 2011/12/21 メディア: DVD…

雑談です。『スパイダーマン:ホームカミング』、最高の学園コメディ。そしてマリサ・トメイ!

『スパイダーマン:ホームカミング』、IMAX3D字幕版で。素晴らしかったです。 久しぶりに劇場で映画を観たので、少し気合いを入れて感想を書いてみようと思ったのですが、スパイダーマンは一応、サム・ライミ版(3は未見)、マーク・ウェブ版とも観ていますが…

映画レビュー『恋するふたりの文学講座』――ロマンティックコメディの皮を被った「俺たち」ムービー。

恋するふたりの文学講座原題:Liberal Arts製作年:2012年監督:ジョシュ・ラドナーあらすじ:「ハッピーサンキューモアプリーズ ニューヨークの恋人たち」のジョシュ・ラドナーが監督・脚本・主演を務め、ヒロイン役に「GODZILLA」のエリザベス・オルセンを…

映画レビュー『ミスター・ノーバディ』――人生のあらゆる分岐を全て、私は経験した。

ミスター・ノーバディ 原題:Mr.Nobody製作年:2009年監督:ジャコ・ヴァン・ドルマルあらすじ:「トト・ザ・ヒーロー」「八日目」で知られるベルギーのジャコ・バン・ドルマル監督が、人生の選択によって生じるさまざまな可能性を、複数のパラレルワールド…

映画レビュー『とうもろこしの島』――静かな緊張感と、エロティシズム。

とうもろこしの島原題:Simindis kundzuli 製作年:2014年監督:ギオルギ・オヴァシュヴィリあらすじ:ジョージア最西端に位置するアブハジアが独立を主張してジョージアと戦争を開始した1990年代初頭。両者の間を流れるエングリ川の中州にできた島に老人が…

劇場未公開コメディ・ムービーの愉しみ――あるいは、つまらなそうな邦題と、映画の面白さはほぼ関係ないことについて。

www.imdb.com ブログの副題のところに挙げている、「映画と本、自然観察(あるいは30代後半、2児の父の日常)」というのが、このブログを始めるにあたって、中心的に書こうと思っていたことでした。 理由は簡単で、私が日常生活のなかで、いちばん関心があっ…