ソトブログ

文化系バーダー・ブログ。映画と本、野鳥/自然観察。時々ガジェット。

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映画

日々のレッスン #017――めまぐるしく世の中が動く、だがどれほどめまぐるしくても、体内の調整ほどめまぐるしくはない。

フィクションのような日記のような連載「日々のレッスン」第17回。/年末から年始にかけては宗教と植物になりそうだった――というのはわたしの読書のことで、きわめて個人的な話だが、だからこそ様々な社会的要因に影響を受けている。

日々のレッスン #009――「読み返したい本」のどこかのページを開き、書き写すのだ。できればノートに、手で(ペンで)。あるいはポメラでも、PCでも構わない。

フィクションのような日記のような連載「日々のレッスン」第9回。<何度も読み返したくなる本があり、いくらでも観返したくなる映画がある。そんなにたくさんはない。たぶん三桁はいかない。実際に読み返す、観返すものはもっと少ない。>

映画レビュー『人生の特等席』――いっそ清々しい、最高の「罵倒映画」を何度でも。

2012年の、クリント・イーストウッドの「監督作でない」主演映画。正直平凡な作品ではあるのですが、わたしは大好きな作品です。その肝を、今回、改めて探ってみました。

【連載小説】「踊る回る鳥みたいに」――第14回 “この現実が、映画や芝居のセットみたいなものだと考えたら”

連載小説「踊る回る鳥みたいに」第14回。/折口信夫原作、近藤ようこ作画『死者の書』。それを読んで、折口信夫をウィキペディアで調べた。「何でも調べられる世の中だから、何を調べて、何を調べないかを、あなたは試されているんだよ」いつも誰かにそうい…

【連載小説】「踊る回る鳥みたいに」――第13回 “童話の雪辱”

連載小説「踊る回る鳥みたいに」第13回。/ローカルニュースだった。ある動物園で動物たちの運動会をしていた。ウサギとカメが、「童話の再現」としてレースをしたんだそうだ。

【連載小説】「踊る回る鳥みたいに」――第12回 “ベースボールのフィールドではない場所はどこにもない”

連載小説「踊る回る鳥みたいに」第12回。/「野球ってさ、マウンドからホームベースまでの距離とか、ベースとベースのあいだの距離、角度とかは決まってるけど、ファウルゾーンの広さとか、ホームから外野フェンスまでの距離が決まっていないじゃない」

映画レビュー『劇場版ポケットモンスター ココ』――「分断の時代」に選ばれた、奇を衒わない「共生」の物語。

小6の長男と年長組の次男、息子たちに勧められてみた本作、『劇場版ポケットモンスター ココ』。彼らの激「推し」も納得の、現代に描かれるべき真っ当な、そして愉しい「共生」の物語でした。

2021年マイ・ベスト・ブック:絵本編『さわる たんけんたい』(月刊「かがくのとも」2021年12月号・通巻633号)/触る愉しさの再発見から、想いは戦場へ行った――。

2021年ももうすぐ終わり、今年読んでよかった本を選んでみました。今回は、絵本編。福音館書店の月刊絵本、「かがくのとも」2021年12月号『さわる たんけんたい』です。

映画『グランド・ジャーニー』――野鳥に安全な「渡りルート」を教える人間の執念。

息子と4年半前に鳥見を始めるまでずっと、音楽好き/映画好き/文学好きのインドア人間だった私には、Fishmans(フィッシュマンズ)”、という大好きなバンドがありますが、今回取り上げる作品は魚ではなく鳥――フランスで“バードマン”の愛称で親しまれている…

それはただの夏。――2020年の春から夏にかけて、地元ノ自然ニテ野鳥ヲ見タルコト。

2020年の春から夏にかけては、息子たちと鳥をたくさん見ました。3月から約3ヶ月、学校も幼稚園も休みになって、そんな今年が特別な年だったのか、巷間言われるように“新しい普通”ということなのか、わたしには見通せる力はないけれど、わたしと同時期に鳥見…

「何かが起こるのを待っているけれど、それが何か分からない」――映画『アメリカン・アニマルズ』と画集『オーデュボンの鳥』

例年より短くなった2020年の夏休み。この数年のバードウォッチングの成果をまとめた長男の自由研究を手伝いつつ、私がこの夏に観たのは、“時価10億円以上の鳥の絵”、ことオーデュボンの「アメリカの鳥類」を盗み出す大学生の実話を描いた、映画『アメリカン…

映画レビュー『スイス・アーミー・マン』――緊急事態宣言下のGW、ひとりの部屋でする死体との語らい。

「死は終わりではない」とか、「“死”は“生”の一部である」(逆かもしれない)という言い方で、というよりもそのようなフレーズ/命題に取り組むような形で、文学や宗教、人間の思考の営みは開闢いらい、続いてきました。ダニエル・ラドクリフの「死体」だけ…

映画レビュー『運び屋』――映画を観た翌日、子どもたちの歌う「Shangri-La」を聴きながら考えたこと。

2019年3月12日、レイトショーで本作『運び屋』を観ていた私は、その晩駆け巡ったという、電気グルーヴ、ピエール瀧の逮捕のニュースを知る由もありませんでしたし、帰ってからも単身赴任のアパートにはテレビもなく、その日はラジオのニュースも聴かず、ネッ…

映画レビュー『フライド・グリーン・トマト』――彼女と私は違うけれど、彼女は私自身である。

この、『フライド・グリーン・トマト』といういっぷう変わった――でもその実、「青いトマトのスライスを衣をつけて揚げた料理」という、これ自体にはドラマ性を感じさせないタイトルの1991年公開の本作を、今になって観ようと思ったのは、@reborn4344さんのブ…

映画レビュー『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』――トム・クルーズにもイーサン・ハントにも、私たちにも同じように、時間の流れる。

映画に限らず、フィクション、あるいは芸術全般まで拡げてもいいけれど、批評することと、感想は違います。しかしそれ以上に、「批評すること」と「観ること」そのもの、「感想」と「観ること」そのものは、「批評」と「感想」との距離よりも、ずっと遠いこ…

『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』の前に、トム・クルーズの初期の傑作群を観直してみる。

トム・クルーズ製作・主演の『ミッション:インポッシブル』シリーズ最新作、『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』が公開になりました。近年映画好き、トム・クルーズ大好きになった私は今回初めて、本シリーズの劇場公開に立ち会えそうです(201…

映画レビュー『パターソン』――パターソンが詩を書いている、何のために?

『パターソン』という映画の主人公、ニュージャージー州パターソンに住むバス運転手のパターソンは、小さなノートに毎日まいにち、詩を書きつけています。パターソン自身と、同居している妻以外は読むことのないその詩を、妻は、素晴らしい作品だから発表す…

映画レビュー『夜の浜辺でひとり』――稀代のミニマリスト、ホン・サンスの“たのしい人生”。

この1月に初めて『アバンチュールはパリで』(2008年)を観て以来ホン・サンス監督作品にはまり、この半年で本作を含め15作品を観てきました。しかしながら、その「面白さ」を人に伝えるのは、難しい。端的にいって、ホン・サンスの映画では何も起こりません…

映画レビュー『早春』――スコリモフスキのカルト青春映画とバーホーベン版『ロボコップ』を、私的な補助線で結ぶ。

デジタルリマスター版、という形で1972年の日本公開から数えて40数年、先頃(2018年3月)初めてソフト化され発売された『早春』のDVD(およびブルーレイ)に収録のイエジー・スコリモフスキ監督のインタビューによれば、本作の脚本は、監督自身が知人のカッ…

映画レビュー『ひと夏のファンタジア』――甘美でセンチメンタルなタイトルをまとった、私たちの現実や記憶に作用する劇薬として。

『ひと夏のファンタジア』という甘酸っぱくセンチメンタルなタイトル――、河瀬直美監督の提唱をきっかけにスタートした「なら国際映画祭」における映画製作プロジェクト、<NARAtiveプロジェクト>によって製作されているということ――、宣伝ヴィジュアルやス…

100記事め。ブログを始めて感じたこと。というよりそれを通じた「出合い」について。

100記事。という感慨は(実は)あまりないのですが。 気がつけば2017年7月に始めたこのブログも、8ヵ月でようやく、100記事めとなりました。本当のところ、文章力(のなさ)やアクセス数(の少なさ)はともかく、書きたいことはいくらでもあるので、とくに10…

映画レビュー『スリ<掏摸>』――ロベール・ブレッソンのエンターテインメント(!)

ロベール・ブレッソンの映画というと私は2015年、デジタルリマスター版が上映された『やさしい女』(1969年)を劇場で二回、観ました。精神的に非常にヘヴィな状態だった当時の私にとって、主人公の妻の飛び降り自殺から始まる、ドストエフスキー原作のこの…

映画レビュー『私は猫ストーカー』――人間のドラマで映画は成立しているが、この世界は人間のドラマで成立しているわけではない(例えば、猫がいて)。

このブログでは映画レビューを書いていますが、そのほとんどは、(新作・旧作関わらず)書いたそのときに初めて観たものです。しかし今回は、私が何度も観返している大好きな作品について書いてみたいと思います。―きっかけは私自身のこんなツイートから。

2017年に観た247本のベスト・オブ・ベストが『ホーホケキョ となりの山田くん』な私が選ぶ、2017年映画ベストテン。

――記事タイトルだけで出落ち感がアリアリですが、私、いたってマジメです。当ブログではたびたび、「初めてその本を手に取る読者にとっては、新刊も旧刊もなくて、その人にとっての新刊、<新しい出会い>なのだ」「ユーザーが手に取ったときが、彼/彼女に…

映画レビュー『アバンチュールはパリで』――原理的に面白くなくなりようがない、ホン・サンス無双。

初めてホン・サンス監督の映画を観ました。 いきなりの結論としては、滅茶苦茶面白かった。しかも、「滅茶苦茶面白かった」という言い方が滅茶苦茶似合わない面白さ。

映画レビュー『Biutiful ビューティフル』――やりきれない出来事の向こう側。

映画を観たり小説を読んだりして、「~について考えさせられた。」というとき――この映画でいえば“<父親>であることとは何か”とか、“<搾取>の上に私たちの生活が成り立っていることについて”とか、“犯した罪を償うこと/赦しを請うこと”とか、“信じること…

映画レビュー『ガタカ』――このちょっとおセンチで、緩さも感じさせる一種の青春SFが、誰かの名刺代わり、オールタイムベストにもなり得る理由。

この映画の後半、クライマックスに近い場面で主人公、ヴィンセント(イーサン・ホーク)が宇宙局「ガタカ」の同僚・アイリーン(ユマ・サーマン)に言うこんな台詞――。「何が不可能か君にはわかるはずだ。欠点を探すのに必死で気がつかなかっただろ。こんな…

「#名刺代わりの映画10選」について色々と考えた結果さらけ出す、“映画に仮託した”私。

先日来Twitterで、「#名刺代わりの映画10選」というハッシュタグがちょっとした盛り上がりを見せ、映画好きもそれほどでもなさそうな人も、思いおもいに、それぞれの10本を挙げられているのを眺めていて――、私も色々と考えていました。そもそも「名刺代わり…

プレイリストから始まる出会い。――あるいは最高の「プレイリスト映画」、そしてAmazon Musicプレイリスト共有のススメ。

愛すべき“プレイリスト映画”たち。――近年最もヒットした「プレイリスト映画」(そんなジャンルありませんが)は勿論、キーラ・ナイトレイ扮するSSWと、マーク・ラファロ演じる落ち目の音楽プロデューサーが、互いのプレイリストをスプリットしたイヤフォンで…

映画レビュー『ディス・イズ・ジ・エンド/俺たちハリウッドスターの最凶最期の日』――世界の終わりはセス・ローゲンの映画みたいに。

【ボンクラ男、セス・ローゲン流のハルマゲドン映画。】――セス・ローゲンのはくるくるの天然パーマで小太りの青年(という歳でもないようですが)で、演じる役はいつも、サブカルチャーやマリファナが大好きで、彼女といるよりホモソーシャルな男同士の付き…